最新記事

中国

G7切り崩す習近平「古代シルクロードの両端は中国とイタリア」

2019年3月26日(火)15時10分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

もっとも、トリエステやジェノバが、第二のギリシャのピレウス港になりはしないかという懸念が世界を覆ってはいるが。 

陰の立役者ミケーレ・ジェラーチ

この「晴れの舞台」の立役者は、実はついこの間まで中国の大学で教鞭をとっていたミケーレ・ジェラーチというイタリア人経済金融学者だ。2008年から浙江大学の教授を務め、2013年からは同じく浙江省にある寧波諾丁漢大学(The University Of Nottingham Ningbo China)でも教育研究に当たっていた。この大学はイギリスを懐柔するために2004年、胡錦濤政権時代に設立されたもので、そのころ浙江省の書記だった習近平は、祝いの言葉を寄せている。

ジェラーチはもともと銀行に勤めた経験もある投資家でもあったことから、中国経済、特に一帯一路に強烈な興味を持った。

2018年5月にイタリアで選挙があり、紆余曲折を経て8月に現在の新政権が誕生したのだが、現政権は誕生2カ月後に「中国任務ワーキンググループ(中国担当タスクフォース)」を設立した。その代表者が新政権で経済発展省次官に抜擢されていたミケーレ・ジェラーチだ。流暢な中国語をあやつるジェラーチは、「イタリアこそが一帯一路に参画すべきで、古代シルクロードの始発点であったローマが、新時代のシルクロードに参画しないことはあり得ない話だ!」という主張の持ち主なのである。

習近平のイタリア訪問に合わせて、3月22日、中国政府の通信社である新華通信の電子版・新華網がジェラーチを独占インタビューし、それを中国政府網が大きく報道している

ジェラーチは、「イタリアの対中貿易は大きくヨーロッパの周辺国から立ち遅れており、たとえばフランスのワインの対中輸出はイタリアの7倍であり、あのアイルランドでさえ食品や飲料などにおいてイタリアを遥かに優っている」と指摘し、「イタリアは一刻も早く追いつき、先頭を走らなければならない」と強調した。

これに呼応して、CCTVの取材を受けたコンテ首相は「一帯一路が提唱する経済貿易は、完全にイタリアの国益と一致しており、イタリアの港湾は、まさに新シルクロードの天然の目的地となり地政学的な位置から利益を得なければならない」と語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、出産費用「自己負担ゼロ」へ 人口減少に歯止め

ワールド

ロシア中銀、ユーロクリアを提訴 2300億ドルの損

ワールド

中国が岩崎元統合幕僚長に制裁、官房長官「一方的措置

ビジネス

フジHD、33.3%まで株式買い増しと通知受領 村
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中