最新記事

中国

全人代「日本の一帯一路協力」で欧州への5G 効果も狙う

2019年3月11日(月)13時15分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

次世代モバイル通信「5G」 SERGIO PEREZ-REUTERS

3月6日、全人代の経済関係に関する記者会見で、中国政府は日本が「一帯一路」に協力していると断言した。これにより欧州の離反を踏み止まらせるだけでなく、その勢いで5Gに関しても欧州を抱き込むべく戦略を練っていることが、8日の報道でわかった。

日本の中国との第三国における協力は「一帯一路」の一環

中国では一般に、全人代(全国人民代表会議)開催期間中に、初日の国務院総理(首相)による政府活動報告が終わると、翌日から当該報告の中で述べられた事項に関して、順次、各関係部局から詳細な説明があり、記者会見で質問にも応じるという形を取るのが通例だ。

今年は3月5日の開幕式に李克強首相によって行なわれた政府活動報告に基づいて、まず翌6日には経済関係に関する記者会見が開かれた。

国務院(中国人民政府)の要請に従い、中国政府マクロ経済の司令塔である発展改革委員会が対応し、同委員会の何立峰主任、寧吉てつ(吉を左右に二つ並べた文字)副主任および連維良副主任などが質問に応じた。

その中で注目されたテーマの一つが、習近平政権が提唱し実行している巨大経済圏構想「一帯一路」に関する中国政府側の認識である。

5日の政府活動報告では「一帯一路」という言葉が5回出て、「昨年は第三国における国際的協力という形の協力関係が強化された」と李克強首相は述べたが、そこでは「日本」という具体的な国名は出ていない(毎日新聞が、「日本」という国名を挙げたとしているが、李克強のスピーチに関しては中国語のナマ放送を聞き、かつ文字化された中国語の報告書全文を注意深くチェックしたが、やはり「日本」とは言っていないように思う)。もっとも、これが「日本」のことを指しているのは、誰の目にも明らかではある。

事実、6日に開催された記者会見では、寧副主任は日本が中国と「一帯一路」に協力し連携していることを明確な断定形で表明している。

それは大きな注目を浴びたため、多くの中国メディアが、「一帯一路」に関する部分だけを抜き出して報道している。

たとえば、「中国経済新聞網」をご覧いただきたい。このサイトの一番上のバナーにある「両会」とは、全人代とともに開催されている全国政治協商会議をまとめて指す中国の呼び方で、「全人代+全国政治協商会議」という意味である。このバナーを付けることが許されていることからも、それなりの権威を持っているサイトだということがわかる。

寧副主任は、「一帯一路」に関して「中国は日本とも、タイ国で合作を始めている」と既存形で説明を行なったと明記してある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テマセク、運用資産が過去最高 米国リスクは峠越えた

ワールド

マレーシア、対米関税交渉で「レッドライン」は越えず

ビジネス

工作機械受注、6月は0.5%減、9カ月ぶりマイナス

ビジネス

米製薬メルク、英ベローナ買収で合意間近 100億ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 9
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中