韓国の受験戦争、大ヒットドラマ「SKYキャッスル」でさらに過熱か
人生を楽に
ここ数年の雇用情勢の悪化を背景に、韓国社会の競争は激しさを増すばかりだ。
韓国統計庁によると、2018年の新規雇用9万7000件は前年の3分の1以下で、2009年以降で最低となった。
「求人が減っていることを反映して、予備校では就職を念頭にした競争が過熱しているようだ」と、韓国労働研究院(KLI)エコノミスト、キム・チョンウ氏は言う。
「韓国社会に広く根付いている、大学を卒業しないと働けないという考え方が、この過剰な教育熱の根本的原因だ」
高校では、午前9時から午後5時までの授業に加えて、自習するため何時間も学校に居残る生徒が多いという。「学院(ハグォン)」と呼ばれる私設の塾で、週末や祝日も夜遅くまで授業を受け、一流の学校や大学への進学を目指す生徒もいる。
経済協力開発機構(OECD)のデータによると、週60時間以上勉強していると答えた韓国学生は23%で、OECD加盟国の平均13%の倍近くになっている。
韓国では、教育機関向け支出が国内総生産(GDP)の5.8%と、OECD加盟国の中でも最高水準にある。また高等教育費用の半分近くを家計がまかなっているが、OECD加盟国の平均は22%にとどまっている。
また、4分の3の韓国学生が「大学を卒業するつもりだ」と回答しており、これもOECD平均の44%を大きく上回っている。
韓国教育部(省)は先月、大学に入ることだけが成功への道だとの考え方が、過剰な競争や民間教育産業の過熱を生んでいるとして、高卒者の採用を促進する計画を発表した。
同部では2022年までに専門高校卒業者の就職率を6割にし、職に就けない大学生を減らすと同時に、大卒者が敬遠する中小企業の人手不足解消を狙っている。
学校でのプレッシャーや、将来の就職への不安が、韓国における若者の高い自殺率の主要な原因だと考えられている。
統計庁によると、10─19歳の子どもの死因で、最大の31%が自殺だった。
社会発展研究所の調査によると、特に成績を心配している韓国高校生の40%が、自殺衝動を感じたことがあるという。また、韓国の子どもとティーンエイジャーの幸福度はOECD加盟国で最低水準だ。
それでも、厳しい韓国経済でより良い生活を求める多くの人たちにとって、一流大学進学は最善の賭けであり続けている。
「SKYキャッスルは極端かもしれないが、それでもトップ大学に入る価値は十分にある」と、ドラマに触発されて、今年受験する娘のために大学コンサルタントを雇ったクウォン・スンオクさんは語る。「そうすれば、機会が広がり良い就職ができる。人生は間違いなく楽になる」
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
[ソウル 3日]
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