最新記事

中東

風雲急!米主導の反イラン連合にロシアが対抗

Russia Will Host Iran As U.S. Tries To Unite Allies Against It

2019年2月14日(木)18時00分
トム・オコナー

(左から)イランのロウハニ大統領、ロシアのプーチン大統領、トルコのエルドアン大統領(2017年11月、ロシアのソチで) Tony Gentile-REUTERS

<イスラエルとスンニ派アラブ諸国を中心にイラン包囲網を築こうとするトランプ政権に対し、プーチンとトルコはイランの味方に>

「反イラン陣営」の勢力固めを急ぐアメリカに対抗し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はイラン、トルコの大統領と首脳会談を行う。

2月13日から2日間、ポーランドの首都ワルシャワで開催されている「中東の平和と安全保障の未来」に向けた国際会議は、表向きはアメリカとポーランドの共催という形をとっている。だが実際のところは、トランプ政権とイスラエル、そしてサウジアラビアが、共通の敵であるイランの封じ込めを狙って、欧州やアラブ諸国を味方に引き込もうと開いた会議だと見られている。当然ながら、イランは招待されていない。

この会議に日程を合わせるようにプーチンは14日、ワルシャワから約1500キロ離れた黒海沿岸のソチに、イランのハサン・ロウハニ大統領とトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領を招いて、シリア和平の道筋を探る三頭会談を開催することにした。

ロシア政府が11日に発表した声明によれば、会談の目的は「シリアにおける長期的解決を目指し、さらなる共同歩調を話し合う」こと。プーチンはロウハニ、エルドアンとそれぞれ別個に二者協議も行う予定だ。

イラン国内は反米一色に

1979年のイラン革命で欧米がテコ入れしていた王朝が倒れ、シーア派の宗教指導者が実権を握って以来、イランは欧米諸国と対立してきた。折しも2月11日に革命40周年を迎えたイランでは、トランプ政権の制裁強化で経済が悪化。生活苦にあえぐ国民が「すべてはアメリカのせいだ」と叫び、全土が反米一色に染まっている。

オバマ前政権時代の2015年にイランと欧米など6カ国の間で核合意が成立し、イランに対する経済制裁の解除が始まったが、トランプ政権は、イランが制裁解除をよいことに弾道ミサイルの開発を進め、中東各地でシーア派の武装勢力に資金を提供しているとして、核合意から離脱。中国、ロシア、イギリス、フランス、ドイツはアメリカ抜きでの合意の維持に腐心している。

シーア派の盟主を自任するイランは、シーア派の流れを汲むシリアのアサド政権を支援し、レバノンのシーア派武装勢力ヒズボラにもテコ入れしている。一方、2003年の米軍のイラク侵攻をきっかけに中東で勢力を広げた国際テロ組織アルカイダや、その後に台頭したISIS(自称イスラム国)は、イスラム教スンニ派主導の組織で、2011年にアメリカとその同盟国が支援する蜂起でリビアとシリアで内戦が勃発すると、支配地域を大きく拡大した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英生保ストレステスト、全社が最低資本要件クリア

ビジネス

インド輸出業者救済策、ルピー相場を圧迫する可能性=

ワールド

ウクライナ東部の都市にミサイル攻撃、3人死亡・10

ワールド

長期金利、様々な要因を背景に市場において決まるもの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 5
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中