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アップル失速は中国経済減衰のせいなのか?

2019年2月8日(金)15時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

その一部以外は、性能がいいかどうかで決めていることが、これら一連のランキングで窺われる。

もし中国経済が減速したからAppleの売れ行きが悪くなったのなら、春節前の6位の「iPhone XR」が残るはずだが、そうはなってなく、最も高価なものがトップ10に1機種だけ残っている。

もちろん春節だから奮発したという側面は否めないが、しかし日本のメディアが何かにつけて「諸悪の原因は中国経済の減速にあり」と言いたがるのは、少し違うのではないだろうか。

中国経済の量的減速は確かだろうが、要は、Appleには魅力がなくなったのだ。

そして、最後に述べるように、中国に頼り過ぎる日本の貿易構造と産業構造そのものにも原因がある。

「理念設計はアメリカAppleで組み立ては中国、部品は日本」の無理

拙著『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』の冒頭にも書いたように、中国の国家戦略「中国製造2025」は2012年秋の反日大暴動の教訓から生まれている。そのとき「中国製スマホ」の表面にはmade in Chinaと書いてあるが、中を開けてみるとキーパーツである半導体のほとんどはmade in Japanだったことから、反日暴動が反政府暴動へと転換していった。半導体も作れないような中国政府に「中華民族としてのプライドが傷つけられた」という性格のものだ。

その際、ネットに表れたのがApple のiPhoneの製造過程だった。

理念設計を担うアメリカAppleは販売価格の約80%を分捕り、構成部品の半導体を提供する日本が20%ほどを稼ぐ。その間隙を縫った、おこぼれの数パーセント弱を、組み立て工場の中国に落としていく。

この屈辱的な「組み立てプラットホーム」である国家に対する怒りが激しく燃え上がったものだ。

おまけに今は中国のハイテク製品に対してトランプ大統領が25%の高関税をかけているので、アメリカの消費者が更なる高額のiPhoneを購入することになる。そのため「理念設計がアメリカで、組み立てが中国」であるようなハイテク製品に対する高関税を15%くらいまで引き下げて特別「優遇」措置を講じたりしているようだが、効果は限定的。そこでトランプは「組み立てをアメリカで」とAppleのクックCEOに促しているが、クックは首を縦に振ってはいない。

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