最新記事

貿易

独メルケル首相、来日でトランプ保護主義への対抗軸「多国間主義の連携」構築狙う

2019年2月2日(土)13時17分

ドイツのメルケル首相は2月4─5日に日本を訪れ、安倍晋三首相と会談する。写真は2018年10月、ブリュッセルでの日独首脳(2019年 ロイター/Yves Herman)

ドイツのメルケル首相は2月4─5日に日本を訪れ、安倍晋三首相と会談する。通商問題で「米国第一」を振りかざすトランプ大統領や、自国の利益追求に余念がない中国への対抗軸となる「多国間主義の連携」を構築するのが狙いだ。

メルケル氏は昨年、与党・キリスト教民主同盟(CDU)の党首を辞任して連立政権内での意見調整などのわずらわしい仕事から解放され、多国間主義の国際態勢を改めて確立するための外交政策に専念しつつある。多国間主義はドイツの繁栄に欠かせず、日本の利益にもなるものだ。

ドイツが今後2年間、国連安全保障理事会の非常任理事国を務める機会も利用する構えで、先の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、国際関係において「ウィンウィン」の結果をもたらす道を提唱していくと表明した。

それを実行する上でメルケル氏は、安倍氏やカナダのトルドー首相らの「同志」とともに、自由貿易や温暖化対策など共通の利益を守るためのネットワークを築きつつある。

あるドイツ政府高官は「今回のメルケル氏訪日は日本との関係を強化し、厳しさを増す国際政治環境の下でも、両国が緊密かつ簡単に崩れないつながりを維持しているという強いシグナルを送るチャンスになる」と説明した。

日独はともに輸出国で、自由貿易態勢の堅持は双方にとってプラスだ。この点は4日の日独首脳会談でも真っ先に議論される話題になるのは間違いない。

安倍氏もダボス会議で、20カ国・地域(G20)首脳会議議長国として、国際貿易システムの信頼を取り戻し、気候変動への取り組み方法について合意形成が実現するように努めると発言。メルケル氏は、米中対立などによる貿易摩擦の解消が望ましいという立場を共有し、安倍氏を支持している。

先のドイツ政府高官は、日独首脳の連携はトランプ氏の出現や中国の台頭、ロシアからの「挑戦」といった国際政治情勢の変化によってもたらされたと指摘する。

ただ日本は防衛力の観点で米国への依存が大きい分、ドイツへの協力が制約されてしまう。例えば、トランプ氏が昨年離脱したイラン核合意を引き続き有効化するため、欧州連合(EU)はドルを使わないイランとの取引の仕組みを立ち上げたが、日本はこれに参加しないだろう。

それでもドイツ国際安全保障研究所(SWP)の日本専門家ハンス・ヒルパート氏は「欧州と日本のいずれでもトランプ氏が政権運営する米国の信頼度が下がっていることは、日独が新たな協力を模索する追い風になる」と述べた。

メルケル氏は12社の代表団を伴って来日するが、商談は予定されていない。天皇陛下とも会見する。

Paul Carrel

[ベルリン 31日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 総力特集:ベネズエラ攻撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月20号(1月14日発売)は「総力特集:ベネズエラ攻撃」特集。深夜の精密攻撃で反撃を無力化しマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ大統領の本当の狙いは?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 5
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 6
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 7
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 10
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中