最新記事

大麻

思春期に大麻を摂取してなければうつ病が防げたかも 米国で40万件

2019年2月20日(水)17時30分
松丸さとみ

カナダでは、2018年10月に医療用だけでなく娯楽用でも大麻所持が合法化されている Carlos Osorio-REUTERS

<10代の時に大麻を摂取してなければうつ病が防げたかもしれないケースが英国で6万件、米国では40万件に達する可能性があることが明らかになった>

2万3000人分のデータを分析

うつ病にかかっている35歳未満の人の中で、10代の時に大麻(マリファナ)を摂取してなければうつ病が防げたかもしれないケースが英国で6万件、米国では40万件に達する可能性があることがこのほど行われた調査で明らかになった。35歳未満のうつ病の14件に1件の割合になるという。英ガーディアン紙が報じた。

カナダのマギル大学や英オックスフォード大学など複数の大学の研究者が、1990年代半ば以降に発表された11の研究を分析したもので、データは2万3000人分以上になる。結果は、米国医師会発行の精神医学専門誌「JAMAサイキアトリー」に発表された。

18歳未満の時に医療目的ではなく大麻を使用していた人たちを34歳まで追跡調査し、うつ病や不安症の発症について、また自殺行動などについて調べた。年齢や、社会経済的な地位、最初から精神的な問題を抱えていたか、などを考慮した上で分析した結果、思春期に大麻を使用していた人は、後になってうつ病を発症したり、自殺を考えたり自殺未遂をしたりといった行動を取る可能性が高いことが分かった。

18歳未満で大麻を使用していた人の自殺未遂の割合は、使用しなかった人の3.5倍に達した。今回発表された報告によると、自殺を考えるのはうつ病の症状の1つで、精神疾患の後遺症として非常に深刻なものの1つだ。

思春期の2割が大麻を毎月使用

報告書によると、米国では思春期の人の20.9%が大麻を毎月使用しており、12年生(高校の最終学年)の約7%が毎日またはほぼ毎日大麻を使用している。本調査におけるうつ病の人口寄与危険度は7.2%と推定され、米国の18〜34歳の人口(約7000万人)とうつ病の発症率(8.1%)を使って計算すると、大麻が原因でうつ病になった可能性のある18〜34歳の人の数は41万人以上に達するという。14人に1人が、大麻を使用しなければうつ病の発症を避けられたかもしれないことになる。

今回の報告書の共著者であるオックスフォード大学のアンドレア・チプリアーニ博士によると、大麻の精神活性成分のデルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(通称THC)は、脳の中でも感情や学習、合理的思考に重要な部分にあるレセプター(受容体)と結びつく。脳のこの部分にある受容体の密度は思春期にピークを迎える上に、この時期の脳はまだ発達段階であるため、思春期の大麻使用による脳への影響が懸念される、と同博士はガーディアンに説明する。
 
今回報告書を発表した研究者らは、両親や思春期の子供たちの両方に対し、大麻使用でどのような害があるのかをより広く教育していく必要があると訴えている。


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米東部の高齢者施設で爆発、2人死亡・20人負傷 ガ

ワールド

英BP、カストロール株式65%を投資会社に売却へ 

ワールド

アングル:トランプ大統領がグリーンランドを欲しがる

ワールド

モスクワで爆弾爆発、警官2人死亡 2日前のロ軍幹部
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中