最新記事

事件

フィリピン教会爆破事件はインドネシア人の自爆テロ? 2回目のイスラム教自治権投票控え緊張高まる

2019年2月2日(土)17時20分
大塚智彦(PanAsiaNews)

右奥にある爆弾テロが起きた教会の前を軍隊が警備している REUTERS

<相次いで宗教施設が狙われたフィリピンのテロ。犯人が特定できないまま、事件のきっかけとなったとも言われる住民投票2回目が迫っている>

フィリピン南部スールー州の州都ホロ市にあるカトリック教会「アワーレディ・オブ・マウント・カルメル教会」で1月27日に発生した爆弾テロに関連してエドゥアルド・アニョ内務・地方自治相は2月1日、犯行はインドネシア人男女による自爆テロとの見方を明らかにした。

教会爆破事件の発生直後には監視カメラの映像などを根拠に、教会の聖堂内と教会入り口付近の2か所に仕掛けられた2つの爆弾が遠隔操作で約1分半の時間差で爆発したとの見方が有力だった。

ところが1月28日に現場を視察したドゥテルテ大統領が「自爆テロの可能性」を示唆、情報当局が外国人テロリストの犯行をほのめかすなど情報が錯綜していた。

厳重な警備を衝いた爆弾テロ

フィリピン警察などによるとこれまでに22人が死亡、100人以上が負傷したテロ現場は、聖堂の内と外に粉々に飛散した遺体がある凄惨な状況で、爆発の威力を物語っている。このように身元特定も困難な状況から、2回の爆発がともに「自爆テロ」によるものとの説が有力となっているという。

さらにデルフィン・ロレンザーナ国防相も2月1日に地元紙に対して「教会は厳重な警備態勢で、入り口では持ち物検査が行われていた」として爆弾を持ち込んで聖堂内に設置することは事実上困難との見方を示した。そのうえで、女性が身に付けた爆弾であれば「持ち物検査やボディチェックを免れることもありうる」との考えも示しており、これも自爆テロ説を補強する根拠になっているという。

今回事件のあったホロ、さらに1月30日深夜にイスラム教の宗教施設「モスク」に手榴弾が投げ込まれて2人が死亡したサンボアンガ、バシランなどのキリスト教など宗教施設に対しては2018年8月以降、テロの情報に基づき軍による24時間態勢の警戒が続けられ、出入りする市民に対して持ち物検査やボディチェックが行われていたという。

だが、女性に対しては特に男性兵士によるボディチェックは人権上の配慮からあまり厳密に行われていなかったとの情報もあり、結果として女性自爆テロ犯の聖堂内侵入を許してしまったとの見方もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中