最新記事

中朝首脳会談

金正恩訪中と習近平の思惑――中国政府高官を取材

2019年1月10日(木)19時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

金正恩委員長4度目の訪中  Thomas Peter-REUTERS

金正恩委員長4度目の訪中に関して、習近平国家主席の思惑を解く日本メディアの解説には「日本好み」のものが多かった。真相はどうなのか、中国政府高官を単独取材した。事実は日本の報道とかなり異なる。

そもそも「習近平の招聘」に対する誤読

外交関係者なら誰でも知っていることと思うが、たとえば安倍首相がどんなに国賓として招聘されて習近平国家主席と会談したいと切望しても、習近平と会うためなら、習近平からの招聘状がなければ中国入国はできない。

それと同じように、金正恩委員長がどんなに訪中して習近平と会いたいと思っても、習近平の招聘状がなければ中国入国はできないのが常識だ。

しかし日本のメディアは「わざわざ習近平主席が招聘した」と、まるで「習近平が主導的に懇願して金正恩訪中があった」かのように報道し、日本国民をミスリードしている。

実際、どうだったのか。先ず、この点に関して中国政府高官に聞いてみた。

以下、Qは遠藤、Aは中国政府高官。

Q:日本では習近平がわざわざ主導的に金正恩を招聘したような報道がなされていますが、実態はどうなんですか?

A:何をバカなことを言っているのか。外交のイロハを知らない者たちが言っていることになど、耳を傾ける価値もない。当然のことながら、今般の金正恩訪中は金正恩側が懇願してきた。それによって、中方(中国側)は、米朝首脳会談が近づいたなというのを実感したくらいだ。

Q:なるほど、そうなんですね。

A:そうだ。安倍首相の時だって考えてみるといい。二階や山口あるいは谷内といった周辺の幹部が何度北京に足を運び、安倍を国賓として招聘してくれと懇願してきたことか。特に二階は安倍の親書まで携えて、中国の望むとおり一帯一路に協力するからとまで言ってきたので、習近平はやむなく安倍を国賓として招聘する招聘状を書いた。これを以て、「習近平が自ら望んで主導的に安倍を招聘した」と言えるのか。日本の場合を考えただけでも、そうではないことは明らかだろう。

米中貿易交渉とタイミングが合ったのはなぜか?

日本では習近平は米中貿易交渉を中国に有利に進めるために、わざわざ米中通商交渉団の訪中と金正恩訪中の時期を合わせたという解説が多い。昨夜(1月9日)のNHKでは、わざわざ中国研究者に「誰が見たって同じ日を選ぶなんて、それを狙ったことは明らかだ」という趣旨のことを語らせている(他の原稿の締め切りのためにキーボードを叩きながら、チラッと耳に入っただけなので、一言一句正確には記憶していない)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マクロスコープ:高市首相が気を揉む為替動向、政府内

ビジネス

フェデックス9─11月業績は予想上回る、通期利益見

ビジネス

メキシコ中銀、0.25%利下げ ガイダンス修正で利

ワールド

世界の食料価格、11月は3カ月連続下落 1月以来の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中