最新記事

中国

アップル・ショックの教訓――国家戦略「中国製造2025」は反日デモから生まれた

2019年1月5日(土)18時40分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

米アップル、中国での販売減で業績予想を下方修正 Aly Song-REUTERS

国家戦略「中国製造2025」を習近平に決意させたのは、2012年の反日デモにおける日本製品不買運動だった。今その若者がiPhone不買運動により世界経済を動かそうとしている。

アップルがぐらついている

1月2日、アメリカのアップルが販売減で業績予想を下方修正した。さまざまな側面による中国大陸におけるiPhone離れが大きな原因だが、特にアメリカがHuawei(華為技術)を制裁の対象にしていることにより、中国の若者がHuaweiを応援し、iPhone不買運動を強めていることがアップルの業績不振を追い討ちしている。なぜ中国の若者がHuaweiを応援するかに関しては昨年12月30日のコラム「Huawei総裁はなぜ100人リストから排除されたのか?」を参照していただきたい。

ところで、iPhoneの年間販売台数は約2億台で、そのうち4分の1の5000万台が大陸で買われていた。しかし今や中国大陸を中心とした中華圏におけるiPhone不買運動は激しい。

となると、アップルにキーパーツを提供している日本や韓国あるいは台湾の半導体市場は連鎖反応的に打撃を受けることになる。事実、日韓台の株は昨年末比1割以上下落している。Huawei叩きが続けば、今後も続落を招く可能性がある。

「中国製造2025」は日本製品不買運動から始まった

2012年9月、尖閣諸島国有化を受けた中国の若者たちは、建国以来最大規模の反日デモを爆発させ、激しい「日本製品不買運動」を展開した。

ところが反日デモや日本製品不買運動を呼びかける手段である「中国製のスマホ」の中を開けてみると、そこには日本(や韓国あるいは台湾など)の半導体であるキーパーツがギッシリ詰まっているではないか。

では、このスマホは果たして「メイド・イン・チャイナ」なのか、それとも「メイド・イン・ジャパン」なのかという声がネットに溢れはじめた。

iPhoneの分解図も掲載されて、以下のようなコメントが付いていた。

「たしかにほとんどのiPhoneは中国か台湾で組み立てられている。しかし驚くべきことに、1台のiPhoneの利潤に関しては、理念設計側のアップルが80ドルほどを儲け、キーパーツを製造する日本企業は20ドルほどを稼ぎ、組み立て作業しかやっていない中国は、ほんの数ドルしか稼ぐことができないのだ!」

こうして反日デモの矛先はアッという間に中国政府に向かい出し、半導体も製造できないような「組み立てプラットホーム」国家へと中国を追いやった中国政府に対する「反政府運動」に移行し始めたのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中