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アップル・ショックの教訓――国家戦略「中国製造2025」は反日デモから生まれた

2019年1月5日(土)18時40分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

驚いた当時の胡錦濤国家主席は強引な方法で反日デモを鎮圧し、その年の11月から始まる第18回党大会へと進んでいった。こうして政権をバトンタッチした習近平総書記は、国家主席になる2013年3月を待たずに、慌てて国家戦略「中国製造2025」に取り掛かる。

組み立てプラットホーム国家という屈辱的状況から脱却して、「中華民族の偉大なる復興」を実現する「中国の夢」を叶えることによって、なんとか若者たちの心をつなぎ止めようと必死だった。そうでなければ、一党支配体制の維持が危険にさらされるからだ。

中国の若者が中国政府を突き上げ、「購買」によって世界経済を動かす

中国の若者たちの抗議運動という大きな波の力を甘く見ない方がいい。なんと言っても人数の規模が違う。

2012年には中国政府を追い詰め、そして今は「選択的購買」によって世界経済に影響をもたらしている。

習近平は総書記に選ばれた2012年11月から、さっそく言論弾圧に力を入れ、若者が反日デモを起こさないよう監視体制を強化した。反日デモを起こして「日本製品不買運動」を展開されたら、またもや「これはメイド・イン・チャイナか、メイド・イン・ジャパンか」というスローガンを用いて、反政府運動が起きかねないと恐れたからだ。

民主化を叫べば必ず「政府転覆罪」などを口実に逮捕されるので、経済力を付けてきた若者たちは最近では「どこの製品を購入するか」によって、中国政府に対する意思表示を行なうようになっている。

今般、若者が応援しているHuaweiがアメリカによる制裁の対象となったことから、中国の若者たちはiPhoneなど、アップル製品を買わないことによって、アメリカに対して意思表示を始めているのである。

5000万台のiPhoneの中国大陸における売れ行きが不振になったら、当然アップル関連株の下落を招くだろう。15年ぶりとも言われるアップルの下方修正の主因は、中国市場における若者たちの反発によるものだ。

アメリカが中国への制裁対象を、危険性の高い、中国政府そのものであるような国有企業のZTEなどだけに絞っていれば、今般のようなアップル・ショックは出ていなかったかもしれない。中国の若者は、もともとアメリカへの崇拝が強かった。

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