最新記事

中国

アップル・ショックの教訓――国家戦略「中国製造2025」は反日デモから生まれた

2019年1月5日(土)18時40分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国の経済成長が落ちていることにアップル・ショックの原因を求めるのは適切でなく、中国は今、「量から質へ」の新常態(ニューノーマル)に突入している。国家戦略「中国製造2025」に見られるように、徹底した研究開発への大型投資を重んじているので、その間はGDPは量的には成長しない。その分だけ、「2025年」までには、飛躍的な成長を半導体や宇宙開発などで遂げ、その後に質を高めた量的成長をも始めることになると、習近平は決意している。今はまさに「雌伏(しふく)の時」だと、位置づけているのである(詳細は拙著『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』)。

今般のアップル・ショックは、中国の真相を正確に把握し、それに基づいた正確な戦略を練らなかった見返りが来たと見るべきではないだろうか。言論弾圧をするような国が世界の覇権を握るような事態にはなって欲しくないので、アメリカが中国に圧力をかけることには賛同する。しかし正しい圧力のかけ方をしないと逆襲され、日本の国益をも損ねる。

もっとも、昨年12月24日のコラム「日本の半導体はなぜ沈んでしまったのか?」で考察したように、アメリカがHuaweiを制裁するのは、その頭脳であるハイシリコン社の半導体の勢いが凄いからだ(中国国内で1位、世界トップ10で7位)。同盟国である日本の半導体さえ、アメリカの防衛上危険であり、安全保障を脅かすなどという口実で潰したのだから、アメリカを追い越すかもしれない中国のハイシリコン社などは、どんな口実を設けてでも、アメリカは潰しにかかるにちがいない。

ただ、日本製品不買運動により中国政府を突き動かしたあの若者の力が、選択的購買によって今度は世界経済を動かし、アメリカにだけでなく、連鎖反応的に日韓台にまで跳ね返るであろう現象にだけは留意しておいた方がいいだろう。

最後に気になるのはアップルのクックCEOは、習近平の母校である清華大学経済管理学院顧問委員会の委員の一人であるということだ。昨年12月27日のコラム「GAFAの内2社は習近平のお膝元」にも書いたように、クックはスノーデン事件があった2013年の10月に顧問委員会入りしている。その彼が今年の10月に顧問委員会から除名されるか否か、見ものではないか。少なくともクァルコムのCEOは昨年10月まで顧問委員会の委員だったが、2019年のメンバーからは除名されている。クックの扱いを習近平がどうするか、それを確認するのが、個人的には楽しみでならない。

endo2025.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』(2018年12月22日出版)、『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中英文版も)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、リスク資産反発受け 円は衆

ワールド

トランプ氏、インドへの25%追加関税撤廃 ロ産石油

ビジネス

米FRBは年内1─2回の利下げ必要=SF連銀総裁

ワールド

トランプ氏、イランとの取引国に「2次関税」 大統領
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 2
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入った「最強ライバル」の名前
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 7
    鉱物資源の安定供給を守るために必要なことは「中国…
  • 8
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 9
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 10
    「エプスタインは悪そのもの」「悪夢を見たほど」──…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 8
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 9
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 10
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中