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米朝首脳会談

2度目の米朝首脳会談、非核化の「最後のチャンス」と韓国紙

Trump's Kim Summit 'Last Chance' for Peace

2019年1月21日(月)16時00分
ブレンダン・コール

初の米朝首脳会談からは何も生まれなかった(2018年6月12日、シンガポールで)

<トランプがICBM(大陸間弾道ミサイル)だけの廃棄で北朝鮮を許してしまうことを、韓国メディアも警戒>

2月下旬に開催が決まったドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の2回目の首脳会談は、朝鮮半島の非核化に向けた「最後のチャンス」になるかもしれない、と韓国メディアが報じている。

北朝鮮の対米交渉責任者、金英哲・朝鮮労働党副委員長は1月18日に米首都ワシントンでマイク・ポンペオ米国務長官と会談し、2回目の米朝首脳会談開催に道筋をつけた、と英BBCは報じた。

ホワイトハウスは同日、トランプと金が2月下旬に2回目の首脳会談を開くと発表。昨年6月にシンガポールで開かれた史上初の米朝首脳会談以来8カ月ぶり。再会談は非核化交渉の弾みになる、という期待が韓国にはある。

韓国の中央日報は1月19日付の社説で、「北朝鮮の非核化という目標に向けて、会談が意味のある一歩となる可能性はあるが、焦りは禁物だ」と書いた。

「北朝鮮、最後の機会をつかむべき」という見出しのその社説にはこうある。「北朝鮮には時間がない。今後1、2カ月がターニングポイントになる。(北朝鮮は)非核化に誠意を見せて具体的な行動を取るしかない」

一方、韓国の東亜日報は、トランプ政権が短期的な成果で妥協すれば、「北朝鮮に核保有を認める危険な道」になるかもしれない、と警告した。

北朝鮮の術中にはまる懸念も

すでに金は、アメリカが「相応の措置」を取るなら北西部寧辺の核施設を廃棄すると表明している。もちろん、経済制裁の緩和も条件になる。

だが米朝間には具体的な合意はなく、トランプは北朝鮮に大陸間弾道ミサイル(ICBM)だけ廃棄すればいいということになりかねない、と周辺国には懸念がある。米本土まで届く長距離ミサイルだけを廃棄すれば、アジアは中国の核の脅威にさらされることになる。

米シンクタンク「センター・フォー・ア・ニュー・アメリカン・セキュリティ(CNAS)」の客員シニアフェローでソウル在住のDuyeon Kimは米紙ワシントン・ポストにこう語った。「今度の米朝首脳会談は、そもそも本当に非核化が実現するのかしないのか、具体的にどれほどが実現可能で、どれくらいの時間を要するかを知る指標になる」

アメリカの対北朝鮮交渉の責任者を昨年3月に辞任し、現在はアメリカ平和研究所でシニアアドバイザーを務めるジョセフ・ユンはワシントン・ポストに対し、1回目のシンガポール会談のような内容の首脳会談になれば、北朝鮮が非核化を遅らせることを許し「北朝鮮の術中にはまることになる」と語った。

トランプと金は「本気になって非核化に向けたフレームワークを策定し、合理的な期限を設けて意味のある行動目標を作る必要がある」と、ユンは言った。

英紙ガーディアンによれば、北朝鮮分析サイト38ノースの編集長を務めるジェニー・タウンはこう言った。「北朝鮮も、アメリカが何を取引材料に差し出すつもりなのか、目に見える見返りを必要としている」

(翻訳:河原里香)

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