最新記事

半導体

日本の半導体はなぜ沈んでしまったのか?

2018年12月25日(火)10時19分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

80年代の全盛期、日本の半導体は総合電機としての自社のエレクトロニクスを高性能化させるサイクルの中で発展してきた。当時筆者は一橋大学にいて日立HITAC(ハイタック)の大型コンピュータを用いて分子間相互作用を分析するコンピュータ・シミュレーションを行っていたが、CPUタイムなどの関係上、シミュレーションが終わる前にタイムアウトしてしまって速度相関関数やそのスペクトルの計算に困難を来していた。そこで理研に通って富士通FACOMを使わせてもらいシミュレーションを完遂させたりしたものだ。それによりアメリカのアルゴン研究所がIBMを使って計算する速度相関関数やそのスペクトルと同等に競争することができた。つまり、日立や富士通などの大型計算機はIBMに近づいており、他のハイテク製品の性能を高めるための半導体の開発は、アメリカを凌いでいたと言っても過言ではない。

ところが1993年にインテルがマイクロプロセッサーPentiumを、 1995年にはマイクロソフトがPC用のOSであるWindows95を発売すると、世の中はワークステーション時代からPC時代に入り、いきなりインターネットの時代へと突入し始めた。

それまでのDRAMは供給過剰となって日本の半導体に打撃を与え(DRAM不況)、二度にわたる日米半導体協定によって圧倒的優位に立ったアメリカ半導体業界が進めるファブレス(半導体の設計は行うが生産ラインを持たない半導体企業)など、研究開発のみに専念する生産方式についていけなかった。時代は既に設計と製造が分業される形態を取り始めていたのである。

当時の通産省が率いる包括的な半導体産業に関する国家プロジェクトは、分業という新しい流れについていくことを、かえって阻害した側面がある。

一方、バブルの崩壊なども手伝って、1991年ごろには日本のエレクトロニクス関係の企業は、半導体部門のリストラを迫られていた。

「土日ソウル通い」:日本の半導体技術を「窃取した」韓国

リストラされた日本の半導体関係の技術者を韓国のサムスン電子が次々とヘッドハンティングしたことは周知の事実だろう。また2014年には、東芝のNAND型フラッシュメモリーの研究データを韓国企業に不正に流出させたとして、東芝と提携している日本の半導体メーカーの元技術者が逮捕されたこともある。

しかし、こんなものは実に「かわいい」レベルで、もっと凄まじい「窃盗まがい」のことが起きていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-ベネズエラ原油の米輸出巡り協議

ワールド

ウクライナ「安全の保証」で合意、有志国連合首脳会合

ワールド

ロシア、ベネズエラ支援継続 「外部干渉受けず自らの

ワールド

再送ウ有志連合、安全の「保証」で拘束力ある約束も 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 5
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 6
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 7
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 8
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 9
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 10
    砂漠化率77%...中国の「最新技術」はモンゴルの遊牧…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中