最新記事
日本社会

就職氷河期世代を襲う「セルフ・ネグレクト」 自らの健康を蝕む「緩慢な自殺」とは?

2018年12月20日(木)19時23分
菅野 久美子(フリーライター) *東洋経済オンラインからの転載

セルフ・ネグレクトから孤独死という負の連鎖は高齢者だけでなく、団塊ジュニアやゆとり世代にも起こりうる話だ

不摂生や医療の拒否、部屋のごみ屋敷化などによって、自らの健康状態を脅かす、セルフ・ネグレクト(自己放任)。孤独死とも密接な関係にあるこのセルフ・ネグレクトが、近年大きな社会問題となっている。緩慢な自殺と呼ばれるセルフ・ネグレクトの最前線を追った。

「ああ、このお部屋は、セルフ・ネグレクトですね」

全国に展開している大手特殊清掃会社の特殊清掃人の女性は、部屋に入るなり、厳重な防毒マスク越しに私にそう教えてくれた。スースーという呼吸の音だけが、家主を失った部屋に響く。

築30年は下らない老朽化したアパートの、いわゆるゴミ屋敷のような6畳一間の部屋。そこで50代の男性は、脱ぎ捨てたおむつや、段ボール箱、散乱するコンビニのお菓子の空袋に埋もれるようにして亡くなっていた。

特殊清掃現場のほとんどがセルフ・ネグレクト

私が初めて取材で入った特殊清掃の現場は、このセルフ・ネグレクトの男性の部屋だった。妻子との離婚後、男性は1人で生活していたらしい。ほこりを被った段ボール箱からは、ありし日の妻子と写った写真が出てきた。

畳の上には、ベッチャリとした繊維質の黒い塊があって、それが頭皮ごと剥がれ落ちた髪の束であることにすぐ気づいた。当然遺体本体はそこにはないが、警察が遺していった、男性の「落とし物」に、思わずぞくりとさせられた。

セルフ・ネグレクト――。一般的には聞きなれない言葉かもしれないが、特殊清掃の世界ではまるで日常用語のように使用されている。拙著『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』でも詳しく追っているが、彼らが請け負う案件の傾向をみているとその理由がよくわかる。そのぐらい、セルフ・ネグレクトと孤独死とは切っても切れないつながりがある。

関東地方に住む民生委員の徳山さん(仮名)も、セルフ・ネグレクトと言われる人に接してきている。また、セルフ・ネグレクト状態から孤独死で亡くなった人を何人も見てきたのだという。

徳山さんはおっとりとした60歳の女性で、子どもたちがお世話になった地域の役に立ちたいと思うようになり、民生委員となった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:「高市ラリー」再開か、解散検討報道で思惑

ビジネス

トランプ米大統領、クレジットカード金利に10%の上

ビジネス

関税返還となった場合でも米財務省には十分な資金=ベ

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米雇用統計予想下回る 円は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画をネット民冷笑...「本当に痛々しい」
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 6
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 7
    美男美女と話題も「大失敗」との声も...実写版『塔の…
  • 8
    決死の嘘が救ったクリムトの肖像画 ──ナチスの迫害を…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 6
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 10
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中