最新記事

経済予測

2019年はどんな年?金融市場のテーマと展望

2018年12月21日(金)16時00分
上野 剛志(ニッセイ基礎研究所)

トランプの政策に翻弄された2018年(12月1日、ブエノスアイレスでの米中首脳会談) Kevin Lamarque-REUTERS

<「一強米国」の景気動向、米中貿易摩擦、イギリスのEU離脱など大型リスクが存在する2019年、円高・株安リスクを常に警戒すべきだ>

<要旨>

1、2018年のこれまでの市場の動きを振り返ると、ドル円は底堅い一方、株価はやや下落している。為替市場では、貿易摩擦への懸念などでリスク回避的に円が買われたが、大規模減税等に伴う好調な米経済への信頼感や金利上昇からドルも買われたことで、ドル円では概ね横ばいを維持した。一方、株式市場では、好調な米経済が下支えとなったものの、貿易摩擦に伴う中国経済減速懸念などが下落要因となった。米利上げが米株価の逆風となり、日本株の抑制に働いた面もある。トランプ政権の政策の影響を大きく受けたという意味で、「2018年はトランプ政権に翻弄された一年」と総括できるだろう。

2、それでは、来年2019年は金融市場にとってどのような年になるのだろうか?内外の注目材料としては、米国については景気、利上げ、貿易摩擦の行方、中国については景気減速の度合い、欧州については政治リスク、国内については景気(消費税引き上げの影響)と参院選などが挙げられる。日銀の政策変更はないだろう。

3、メインシナリオとしては、米経済は来年後半に減速するもののゆるやかな減速に留まるため、FRBは2回の利上げを実施、米金利は持ち直すと見ている。ドル円は来年夏にかけて上昇し、その後は利上げ打ち止め観測から緩やかに下落するが、今年と比べると、やや円安ドル高水準での推移を予想している。日本の株価についても、足元の過度な悲観が修正されるにつれて、円安と歩調を合わせる形で持ち直すと見ている。

4、ただし、米国も含めて世界経済が加速する可能性は低く、大幅な円安・株高は見込みづらい。また、米国の保護主義に端を発する貿易摩擦は来年も続く可能性が極めて高く、株安・リスク回避の円買い圧力が強まる局面がたびたび発生するだろう。様々な大型リスクが存在しているだけに、円高・株安リスクに警戒を怠れない状況が続きそうだ。

12202019.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本の経済成長率予測を上げ、段階的な日銀利上げ見込

ビジネス

今年のユーロ圏成長率予想、1.2%に上方修正 財政

ビジネス

IMF、25年の英成長見通し上方修正、インフレ予測

ビジネス

IMF、25年の世界経済見通し上方修正 米中摩擦再
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 8
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中