<難民の存在と人権侵害の実態が外部の文明社会から「視認できない」現状>

写真集『The Castle』に収められているのは、各国の難民キャンプ。多くは周辺の現代的な社会から受け入れを拒まれているかのように隔離され、人目に付かないよう隠されているような場所もある。

撮影したリチャード・モスがテーマとしたのは、難民に対する政府や社会の冷淡な姿勢と、その結果として彼らが送る生活の悲惨さだ。だが彼は個々の人物に焦点を当てるのではなく、あえて遠距離から全体のイメージを捉える手法を採用した。しかも使用したのは、軍事監視用の赤外線サーマル(熱感知)カメラだ。

多くのテントや仮設の建造物が複雑に立ち並ぶモノクロの世界に、人体が発する熱が亡霊のように浮かび上がる。その姿は、難民の存在と人権侵害の実態が外部の文明社会から「視認できない」状況を暗示している。

悲惨な生活ぶりや貧しい身なりの子供の写真のほうが、同情は呼べる。だが同情することは、彼らの悲惨な状況を見過ごしてきた先進国の人々にとって一種の免罪符にもなる。自分自身にも責任の一端があると認めつつ、モスは写真を見る人もまた、彼らを見捨てた共犯者なのだと訴えている。

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2008年に閉鎖されたテンペルホーフ空港の跡地。公園に生まれ変わったこの地に、難民の臨時避難所が置かれている(ドイツ・ベルリン)
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シリアの隣国レバノンでは、人が密集し過ぎて不満が高まらないよう各キャンプを小規模に抑えている
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幹線道路脇の廃墟となっていたモーテルが、難民の一時収容施設として使われている(セルビア)
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シリアとの国境にあるトルコの小さな町の中心部には、シリア内戦から逃れてきた人々のキャンプが
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使用されていなかったオリンピック用のホッケースタジアムで暮らす難民たち(ギリシャ・アテネ)
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2015年から難民収容施設として使われている旧テンペルホーフ空港のターミナルビルの内部(ベルリン)