最新記事

欧州

アンダルシア州議会選で極右躍進 スペイン政治も激動の時代へ

2018年12月9日(日)13時07分

12月3日、スペイン南部アンダルシア自治州議会選で、新興の極右政党ボックスが12議席を獲得する驚きの結果となったことを受け、同国の政治家は右派、左派ともに同じ結論に達した。写真は2日、セビリアで選挙結果を喜ぶボックス支持者(2018年 ロイター/Marcelo Del Pozo)

スペイン南部アンダルシア自治州議会選で、新興の極右政党ボックスが12議席を獲得する驚きの結果となったことを受け、同国の政治家は右派、左派ともに同じ結論に達した。スペインの政治は変わり、元には戻らない。

サンチェス首相率いる社会労働党は第1党を維持しつつも議席を大きく減らし、同州で政権の座を失う可能性が出てきた。

スペインは来年5月、多くの地方自治体選挙と欧州議会議員の選挙が控えている。各党は変化する情勢の中で主導権を握ろうと色めき立った。

保守・国民党のパブロ・カサド党首は記者会見で「これはほんの始まりだ。スペインは限界に達した」と述べた。

アナリストによると、アンダルシア自治州議会で分かったのは(1)極右の台頭(2)政治情勢の分断加速(3)地方自治権や移民問題を筆頭とする二極化の深まり──であり、今後もこうした状況は続きそうだ。

「2日の出来事ですべてが変わった」と語るのは、世論調査会社GAD3のナルシソ・ミチャビラ氏だ。ボックスの議席獲得は予想していたが、12議席も取るとは驚きだという。

ミチャビラ氏によると、アンダルシアの有権者は左派、右派ともに、サンチェス政権の国政に物を申す機会として投票を活用したことを調査は示している。カタルーニャ自治州の独立問題について弱腰過ぎるといった批判から、早期総選挙への要望まで、さまざまな思いが込められたという。

選挙前倒し

ボックスのサンチャゴ・アバスカル党首は記者会見で「ここで起こったことがスペイン全体の行方を決するだろう」と語った。

泡沫政党だった同党は、主流政党に対する有権者のうんざりした気持ちや、スペインの結束および移民流入への不安を背景に票を集めた。アンダルシアには北アフリカからの移民が大勢流入している。

スペインが1970年代に民主主義を取り戻して以来、極右政党が選挙で躍進したのはこれが初めてだ。来年5月の選挙では、移民受け入れと自治体の権限拡大に反対するボックスが、より多くの地方で議席獲得を狙うかもしれない。

カルロス3世大学(マドリード)の政治科学教授、パブロ・シモン氏は「ボックスはすべての地方自治体で候補者を立て、議席を獲得すると確信している。スペインは他の欧州諸国と同様、極右政党を含む多くの政党が乱立する姿になった」と話した。

政府高官らは、アンダルシアの選挙を受けて旗幟を変えず、従来の政策を貫くと述べた。サンチェス氏は社会労働党の親欧州主義を維持すると強調している。

重要な問題は、少数派政権を率いるサンチェス氏が予定の2020年を待たず前倒し総選挙に打って出るかどうかと、その時期だ。

ボックスのビクトル・ゴンザレス副党首はロイターに対し、同党は成長し始めたばかりだと説明。「今選挙が実施されれば、2020年に実施されるよりも少ない議席にとどまるだろう」と述べ、焦らない姿勢を示した。

アンダルシア自治州で最終的に誰が知事の座に就くかを巡っては、まだ交渉が始まったばかりだ。アナリストによると、ボックスが国民党と中道右派シウダダノスを支えて右派連合を結成する可能性が最も高いが、極右と手を組めば親欧州主義のシウダダノスにとって厄介な問題となるかもしれない。

(Ingrid Melander記者 Belén Carreño記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 トランプのイラン攻撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月10号(3月3日発売)は「トランプのイラン攻撃」特集。核・ミサイル開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。アメリカとイランの全面戦争は始まるのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

NATO、ミサイル防衛態勢を強化 トルコの迎撃受け

ビジネス

バークシャー、自社株買い再開 アベル新CEOも個人

ワールド

米国のイラン無人機対策を支援へ、ゼレンスキー氏が表

ワールド

イランがディール求めて接触、原油高軽減へ近く追加措
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    「え、履いてない?」モルディブ行きの飛行機で撮影された、パイロットの「まさかの姿」にSNS爆笑
  • 3
    「ハリポタ俳優で終わりたくない」...ハリー・メリングが新作『ピリオン』で見せた「別人級」の変身
  • 4
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 5
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 6
    対イラン攻撃に巻き込まれ、湾岸諸国が存立危機
  • 7
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「旅客数が多い空港」ランキン…
  • 9
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 10
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中