最新記事

SNS

「インスタ映え」に悩む若者たちの新展開 「いいね!」獲得はより複雑・高度に

2018年12月21日(金)20時40分
原田曜平(サイバーエージェント次世代生活研究所・所長) *東洋経済オンラインからの転載

矛盾や葛藤の渦中にある繊細な若者たちの「インスタ映え」の定義は、どんどん変化している

まだ記憶に新しいと思いますが、昨年2017年のユーキャン新語・流行語大賞で大賞を受賞したのは「インスタ映え」でした(ほかに「忖度(そんたく)」が同時受賞)。

この数年で、SNSのインスタグラムをやっていない中高年にも、「インスタそれ自体の存在」と「インスタ映え」なるものが、大体どんなものであるのかという認識が浸透したように思います。

また、この数年で、若者たちの中には「インスタ検索」、つまり、ネットを検索するのではなく、インスタを検索して、その日行きたいレストランや次に行く旅行先を決める、という検索行為も一般化しており、多くの企業や商品にとってインスタとどう関わるか(インスタ上でどうプロモーションするか、インスタ上に一般人にどう投稿してもらえるか)ということが大きな課題になりつつあります。

こうして「インスタ映え」が中高年にも企業の意識にも浸透する間に、若者たちの間では、きらびやかな世界観を演出する従来のインスタ映えが廃れつつあるようです。

今回、若者たちの間ではやり始めている新しいインスタ映えについて、現役の大学生たちがレポートしてくれているのでご覧ください。

作り込まれた「インスタ映え」は時代遅れ?

newsweek_insta18221919.jpg

今回リポートしてくれる大学生たち。左から、城石優希(日本女子大学2年)、山中悠暉(明治大学3年)、今野花音(上智大学3年)(写真:筆者提供)

このところ、若者のインスタグラムの投稿に変化が起きています。「ブランド品や高級なレストラン・カフェでの食事を紹介するためのツール」「カワイイ自分を堂々とアピールするツール」ではなくなってきているのです。

ただかわいくて美しい、インスタ映えするきれいな写真ばかり投稿しているのは、時代遅れかもしれません。今の若者は、投稿への「いいね!」の数を稼ぎつつ、実際の生活での好感度を高めるべく、工夫をしているのです。

今までは多くの人が、自分をよりよく見せようする投稿を目指していました。しかし、インスタ映えをあからさまに狙っている人たちは「インスタ蝿」などと呼ばれ煙たがられる傾向も出てきています。

「インスタ映えするアイスクリームの写真だけ撮って、アイスは太るから食べずに捨てている人がたくさんいた」という内容のツイートが2017年6月ごろに話題になりました。この頃からインスタ映えへの世の中の風向きが変わってきたかもしれません。

そうした中で最近、若者の間で増えているのが、「デイリージェニック」な投稿です。

デイリージェニックとは私たちの造語ですが、今まではやっていたインスタ映えする投稿は、非日常的できれいな景色やモノ、キメ顔を被写体とし、アングルや小道具にこだわって、さらにきれいに見えるように加工された写真でした。徹底的に非日常を追求し、日常的なものは排除するため、隙がなく生活感はありません。

それに対してデイリージェニックは、非日常と日常を掛け合わせたものです。きれいではあるけれど、どこか隙があります。そしてそれが「いいね!」という好感度につながっているのです。

事例を交えながら、具体的にご紹介してみたいと思います。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中