最新記事

テクノロジー

日本の潜水艦「おうりゅう」が世界に先駆けリチウムイオン電池を搭載──バッテリー稼働の時代

2018年11月20日(火)15時00分
内村コースケ(フォトジャーナリスト)

バッテリー式の電動工具の敷居がエンジン式に比べて低いのは、可燃性で扱いが難しいガソリンを使わず、騒音や排気ガスに悩まされなくて済むことなどだ。最近は各工具メーカーもリチウムイオンバッテリー使用機器の拡充に力を入れていて、共通のバッテリーで動かせるシリーズをラインナップしている。これまではバッテリー駆動が考えられなかったチェーンソーからラジオ、コーヒーメーカーなども出ており、建築業者などのプロだけでなく、一般ユーザーからの注目度も上がっているようだ。

7R304936.jpg

チェーンソーといった高出力機器にもバッテリー式が普及しつつある。一般ユーザーや女性でも比較的手軽に扱える 撮影:内村コースケ

最近は我が家でも新しく揃える工具や家電は、なるべくリチウムイオンバッテリー駆動のものを選んでいる。例えば、同じバッテリーを使えるマキタ製のチェーンソー、Bluetooth対応ラジオ、扇風機といった具合だ。

山間地でかつ寒冷地でもある環境では、デジタルカメラといった従来からのリチウムイオンバッテリー使用機器にも、より高いバッテリー性能が求められる。筆者は現在、カメラマン業の主力にフルサイズミラーレスカメラを使用しているが、これもバッテリー性能が大幅に上がった現行モデルからだ。前モデルも使ってはいたが、氷点下になる冬の自宅周辺や山での撮影では、5分とバッテリーが持たないことも珍しくなかった。そのため、業務用には電池消費がより少ない従来型のデジタル一眼レフを使っていた。それが、バッテリーが新型に変わった現行モデルのミラーレスでは、寒冷地でも一眼レフと遜色なくバッテリーが持つようになったため、ミラーレスへの完全移行に踏み切ることができたというわけだ。

過酷な環境下でも行わる電気自動車のトライアル

山での暮らしでは、都市生活以上にインターネット通信が重要なライフラインになっている。インターネット通販に頼りがちな買い物や情報収集もそうだが、都会を中心に回っている「世間」とのつながりをインターネットを通じて維持できるからこそ、山暮らしが実現できている面も大きい。そうした生活では、スマートフォンやノートPCの電池切れは、都会での生活以上に怖いものだ。その点でも、バッテリーの高性能化は大変にありがたい。

もう一つ、山で絶対に欠かせないのが自家用車だ。都市生活者の間ではハイブリッド車や電気自動車(EV)がかなり普及しているが、山では相変わらずガソリン車が主流だ。寒冷かつ、雪道や山道での走破性が求められる環境では、電気自動車のリチウムイオンバッテリーの性能にはまだ懐疑的にならざるを得ない。冬の夜の山道でバッテリー切れになれば、冗談抜きで命に関わるような環境では、「万が一」も許されないからだ。

こうした不安を見越してか、今年2月、日産のEV「リーフ」の真冬の走行テストが、筆者の自宅に近い長野県・蓼科高原の女神湖周辺で行われた。凍結した湖上や周辺道路での走行レポートがいくつかのメディアに掲載されたが、それらによれば、「e-Pedal」というEV特有のトルク制御により、ガソリン車よりもかえって雪上走行性能は上がっているということだ。

一方で、寒冷環境下では「電費」がガソリン車の燃費以上に悪くなるのは避けようがなく、充電設備が普及しきっていない現状では雪国でEVを選ぶ人はまだ少ない。ただ、こうしたデメリットも、デジタルカメラ用バッテリーが寒冷環境下で通常使用できるレベルにまで性能が上がったように、軍用車両にリチウムイオンバッテリーが普及する頃には克服されているだろう。ヘビーデューティーでもリチウムイオンバッテリーが主役になる時代は、すぐそこまで来ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習

ワールド

米中閣僚協議2日目、TikTok巡り協議継続 安保

ビジネス

英米、原子力協力協定に署名へ トランプ氏訪英にあわ

ビジネス

中国、2025年の自動車販売目標3230万台 業界
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中