最新記事

ヘルス

反ワクチンが招いたヨーロッパのはしか大流行

2018年11月3日(土)14時00分
ケリー・ウィン、大橋希(本誌記者)

予防接種は本人だけでなく、周囲の人への感染の危険性も防ぐ Valentin Flauraud-REUTERS

<欧州では子供に予防接種を受けさせない反ワクチン派が多く、これがはしか大流行の主な原因になっている>

ヨーロッパでは今年上半期、麻疹(はしか)が感染者4万1000人以上、死者40人と猛威を振るっている。予防接種拒否の反ワクチン運動が収まらなければ、アメリカにも広がる可能性があると専門家は警告する。

欧州では子供に予防接種を受けさせない反ワクチン派が多く、欧州委員会のアンカ・パドゥラルは、これがはしか大流行の主な原因だと言う。WHO(世界保健機関)によれば、流行を防ぐには人口の95%がワクチンを2回接種していることが必要。しかし、接種率が70%以下という国もいくつかある。

アメリカでもはしかの感染者はかなりの数で、疾病対策センター(CDC)は9月8日時点で137人を報告。背景には、ワクチン未接種の子供が年々増加していることがある。ワクチンが自閉症を引き起こすという誤った説(トランプ大統領など著名人も支持)を親たちが聞かされてきた結果だ。だが多くの研究で、自閉症と予防接種の関連性は証明されていない。

USAトゥデーによればワクチンで予防可能な14の病気について、適切量の予防接種ができていないアメリカの子供は01年に0.3%だったが、15年には1.3%に増加。子供に予防接種を受けさせていない親はこれら病気の大流行に備えるべきだと、CDCは忠告する。病気がはやりそうなときは学校を休ませる、緊急事態に備えて接種済み(または未接種)のワクチンの一覧を作っておくことなどが必要だろう。それはその子供だけでなく、周囲の人々を守ることにもつながる。

日本にとっても対岸の火事ではない。今年春頃には沖縄、愛知などではしかの感染が拡大し、これはほぼ終息したが、現在は首都圏を中心に風疹の感染が増えている。国立感染症研究所の10月23日の発表では、今年報告された風疹患者は1289人と、昨年1年間の14倍だ。

患者は30~50代の男性が多く、予防接種歴が「なし」「不明」が全体の9割以上だという(ワクチンの定期接種が行われていなかった時期があるため)。風疹は妊娠初期の女性がかかると、赤ちゃんに難聴や心臓病などの障がいが起こる可能性がある。CDCは22日、風疹の予防接種や感染歴のない妊婦は日本に渡航しないよう勧告した。

<本誌2018年11月6日号掲載>

ニューズウィーク日本版 トランプの大誤算
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月14号(4月7日発売)は「トランプの大誤算」特集。国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米耐久財コア受注、2月は0.6%増 中東紛争で先行

ワールド

イラン、サウジ・ジュベイルの石化コンビナート攻撃 

ワールド

トルコのイスラエル総領事館前で白昼の銃撃戦、犯人1

ワールド

再送-一部原油現物が最高値、150ドルに迫る 供給
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 4
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 5
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 6
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 7
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 8
    5日間の寝たきりで髪が...ICUに入院した女性を襲っ…
  • 9
    「人間の本性」を見た裁判官が語った、自らの「毒親…
  • 10
    スパイス企業の新戦略...エスビー食品が挑む「食のア…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 8
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中