最新記事

ヘルス

「スマホの電磁波で癌になる」は本当か

DO CELL PHONESCAUSE CANCER?

2018年10月30日(火)18時00分
ロニー・コーエン(ジャーナリスト)

先行する複数の疫学研究では、携帯電話を頻繁に使っているとシュワン細胞に珍しい種類の脳腫瘍が発生する確率が高くなるとの結果が出ている。また、3月にラマツィーニ研究所(イタリア)が学術誌「環境研究」で発表した研究でも、驚くほどNTPの実験と似た結果が出ている。この研究では2448匹のラットに1日に19時間、生まれてから死ぬまで継続して電磁波の照射を行った。すると、最も強い電磁波を浴びた雄のラットで心臓のシュワン細胞に腫瘍が発生する確率が有意に高くなったという。

大学や医薬品メーカーなどの専門家から成る委員会はNTPとラマツィーニ研究所の実験結果を検討し、雄のラットについて「発癌的活動のはっきりした証拠」が示されたとの結論を3月に出した。アメリカ癌協会のオーティス・ブローリー医務部長は「大きな変化をもたらす研究だ」と述べている。

NTPの研究は今年初めに中間報告という形で発表され、大きな反響を呼んだ。だがブローリーが本誌に語ったように、「まだ分かっていない重要な点がいくつか残っている」。例えば雌より雄のラットのほうが悪性腫瘍を発症しやすいのはなぜか。全体的に見ると照射を受けたラットのほうが長生きなのはなぜか。何より、もし携帯電話による電磁波が癌を引き起こすとしたら、そのメカニズムは何なのか。

人々を電磁波の害から守るためにどんな規制を設けるべきかはまだ分からないと、ブッカーは言う。携帯電話の電磁波が何らかのメカニズムで癌を引き起こすことは彼も疑っていないが、そのメカニズムを突き止めない限り、携帯電話をどう設計すべきかアドバイスすることは不可能だからだ。来年までに手掛かりを見つけるべく、彼はさらなる研究を続けている。

既に規制強化を行った国も

南カリフォルニア大学(USC)医学大学院のガブリエル・ザダ准教授は、正常だが影響を受けやすい細胞を、携帯電話の電磁波が癌細胞に変えてしまうメカニズムを突き止めるための実験方法を模索している。例えば外からの電磁波を遮断した箱に、作動中のスマートフォンとヒトの脳腫瘍の細胞を入れたガラス瓶を置くといったやり方で、細胞の種類別に電磁波の影響を比較検証しようというのだ。

NTPの照射実験の最終結果および新たな安全性に関する勧告はこの秋に出される予定だ。

米政府監査院(GAO)は12年の議会への報告で、携帯電話の使われ方の変化や最新の研究結果、WHOの勧奨などを受けて、携帯電話からの電磁波を浴びる量の基準や、試験を行う際のルールの見直しを求めた。そこでFCCは電磁波の基準見直しの必要性について調査やパブリックコメントの募集を公式に開始。16年までに900件のコメントが集まったというが、現在まで何の対応も取られていない。

mobilechart04.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:5年目迎えたウクライナ戦争、戦車が消えド

ビジネス

パラマウント、WBD買収へ 第3四半期完了の見通し

ビジネス

米国株式市場=下落、ダウ521ドル安 イラン緊迫や

ビジネス

NY外為市場=ドル軟調、155円台後半 イラン情勢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石が発見される...ほかの恐竜にない「特徴」とは
  • 4
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 5
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 6
    トランプがイランを攻撃する日
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKI…
  • 9
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 10
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中