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インドネシアの格安航空機、離陸わずか10分後に墜落 過去にも事故起こしていたライオン航空

2018年10月29日(月)15時40分
大塚智彦(PanAsiaNews)


ライオン航空の事故について報じる現地メディア KOMPASTV / YouTube

過去にも事故、ライオン航空

ライオン航空は2000年に運航を開始したインドネシアの格安航空機(LCC)会社でインドネシア国内各地を結ぶ約30路線の他にシンガポールやマレーシアのクアラルンプールなどを結ぶ国際線も運航している。

LCCとしてはインドネシア国内のシェアは最大とされている。このほかにシティリンク、バティック航空、エア・アジア・インドネシアなどがインドネシアではLCCとして運航されている。

ライオン航空は過去2004年11月30日にはジャワ島中部のソロ空港で着陸時に滑走路をオーバーランし乗客24人が死亡、60人以上が負傷する事故を起こしている。また2009年2月23日にはリアウ諸島州バタム島の空港で着陸時に車輪が出ず、胴体着陸をしている。この事故での負傷者はいなかった。

2013年4月13日には世界的観光地のバリ島の空港で着陸に失敗して機体が滑走路をオーバーして海に転落する事故を起こしたこともある。このときは乗客約40人が負傷している。

さらに2013年8月6日にはスラウェシ島北部のゴロンタロ空港でやはり着陸に失敗して滑走路をオーバーランして牛をはねたものの乗客に負傷者はいなかった。

このようにライオン航空は過去に多くの事故を起こしているが、他の格安航空に比較して料金が安く、国内路線も充実していることから利用者が多く、人気のLCCとして定着している。

LCCのため国際線であっても機内での飲み物、食事は全て有料と徹底したコストカットで格安の航空料金を維持している。

ただ安全性についてはやや問題を抱え、度重なる事故の影響もあり2014年の全世界の航空会社の安全性を評価するインターネット上のサイトでは448社中ワースト10社の中にライオン航空は位置付けられるなど、低い評価を得たこともある。

今回事故を起こした610便の機体は2017年に導入したボーイング社の737型機を燃料効率などでバージョンアップした最新のMax8型機と呼ばれるものだ。それだけにボーイング社も事故に関心を示しているという。


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大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

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