最新記事

高齢化社会

歳をとったら暮らしやすい国はどこ? 高齢化対応ができている国ランキング

2018年9月27日(木)17時20分
松丸さとみ

歳をとったら暮らしやすい国はどこ? Dean Mitchell-iStock

世界で一番「高齢化対応」ができた国は?

国連が2015年に発表した調査によると、日本は世界でもっとも「高齢化」が進んだ国だ。しかし当然ながらこれは、高齢化に対応できた社会という意味ではない。では高齢者にとって、世界で最も暮らしやすい国はどこなのだろうか? 日本はその中でどこに位置するだろうか?

老人病専門医でコロンビア大学の教授でもあるジョン・ロウ氏率いる研究チームが、米国の「高齢化研究ネットワーク」と共同で、世界18カ国の高齢化対応をランクづけしてこのほど発表した。高齢化研究ネットワークは、老人病専門医や社会学者、経済学者など13人からなる研究ネットワークだ。

研究者たちは、経済協力開発機構(OECD)などのデータを使って、「高齢化社会指数」を算出し、これをランキングにした。対象国となったのは、OECD加盟国35カ国のうち18カ国。

指数を算出する際には、「生産性や仕事」(高齢者が仕事や学問などで社会に関われているか)、「健康」(高齢者に合った医療が提供できているか)、「公平さ」(格差を減らすべくさまざまな資源を公平に分配できているか)、「繋がり」(世代を超えた社会的な繋がりがあるか)、「安心・安全」(高齢者にとって経済的・身体的に安心・安全な社会か)の5つのカテゴリーを考慮した。

強い北欧勢。日本は?

ランキングで1位になったのは、高齢化社会指数で65点を獲得したノルウェーだった。上位10カ国中、北欧が4カ国を占めた(スウェーデン2位、デンマーク7位、フィンランド9位)。日本は5位だった。

米ニュースサイトのクオーツによると、この調査の主執筆者ジョン・ロウ教授は、米国が3位になったのが興味深いと指摘している。同国がランキングで上位に入った理由は、「生産性や仕事」のカテゴリーで高得点を得たのが大きかったという(同カテゴリーで米国は18カ国中1位)。高得点を得たのは米国では仕事を続ける高齢者が多いからなのだが、ロウ教授は「労働は脳と体にいい」とし、経済的にも安定すると説明。法定定年年齢を引き上げるような政策はいいと研究者らは一般的に考えていると加えた。ただしクオーツは、経済学者のほとんどはこの意見に同意するものの、中には早期退職が健康にいいことを示唆する調査結果もあると指摘している。

一方で、米国では60歳以上の20%(OECD加盟国の平均は12.5%)が貧困のリスクを抱えているため、「公平さ」では46点でワースト3位だった(1位は41点の日本とイタリア)。

日本は「健康」で18カ国中もっとも高い80点を獲得したが、「繋がり」が36点で、イタリア(7点)、ポーランド(21点)、ハンガリーとスロベニア(22点)に続きワースト5位だった(エストニアはスコアなしのためこのカテゴリーは17カ国)。

クオーツによると、成績が振るわなかった国は、他の国と比べて寿命が短い、生活の質が低い、法定定年年齢が低い、という傾向にある。

○ランキング(高齢化社会指数)
ノルウェー(65)
スウェーデン(62)
米国(60)
オランダ(60)
日本(59)
アイルランド(58)
デンマーク(58)
ドイツ(55)
フィンランド(53)
スペイン(52)
英国(50)
オーストリア(43)
ベルギー(37)
イタリア(35)
スロベニア(33)
エストニア(31)
ポーランド(31)
ハンガリー(23)


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウクライナへのトマホーク供与検討「して

ビジネス

バークシャー、手元資金が過去最高 12四半期連続で

ビジネス

米、高金利で住宅不況も FRBは利下げ加速を=財務

ワールド

OPECプラス有志国、1─3月に増産停止へ 供給過
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中