最新記事

イスラエル

ユダヤ偏向のイスラエル観光ツアーに異議あり

Rebelling on Israeli Heritage Trips

2018年9月4日(火)15時45分
デービッド・ブレナン

2012年のバースライトツアーで参加者に講演するネタニヤフ首相 Ronen Zvulun-REUTERS

<祖国の文化への理解を深めるはずの招待旅行に参加したユダヤ系の若者たちが反乱を起こし始めた>

ユダヤ人の血を引く皆さん、「約束の地」イスラエルを旅してみませんか。よろしければ無料でご招待しますよ。

そんな呼び掛けで、アメリカなどにいるユダヤ系の若者をイスラエル観光に勧誘している団体がある。その名を「バースライト(生まれながらの権利)」。親イスラエルの慈善団体で、99年の設立以来、65万人以上の若いユダヤ人を10日間のイスラエル旅行に無料招待してきた。

目的は、世界各地にいるユダヤ系の若者に民族固有の文化や伝統に触れる機会を提供し、それを通じてユダヤ民族「共通の遺産」への認識を新たにしてもらうことにあるという。

しかし参加者の間には異論があるようだ。ツアーの内容に偏りがあり、不誠実で、現実から目を背けている。そんな不満が噴出している。

この夏休み中も、ツアーの途中で一部の参加者が離脱する事件が2度あり、合計8人が別行動を取ってパレスチナ人の居住地区に向かった。ネット上でライブ公開した自撮り映像で、彼らはこう言っていた。「これこそ本物の貴重な機会。人々の声を聞き、学び、終わりなき占領に反対し、自由と平等を支持する得難いチャンスだ」

本誌の取材に応じた離脱組のうち、2人のアメリカ人は現地に入ってすぐ、これじゃダメだと思ったという。

「私が参加したのは、本物の対話を通じてこの国の真実の全てを見たかったから」と言ったのは、ボストン出身のベッキー・ワッサーマン(26)。しかし見せてくれないものが多過ぎたので、離脱を決めた。

ニューヨーク近郊から来たリサ・ネーゲル(24)は、自分がたった6日でツアーを離れるとは思ってもいなかった。でもツアーが進むにつれて、疑問ばかりが増えていった。「ヨルダン川西岸やガザ地区、占領と入植地のことなどについてたくさんの人が質問していた」のに、まともな返事はなかったからだ。大事な質問に「答えてもらえなければ、ツアー主催者への怒りが増すだけ」と、彼女は言う。

現実から目を背けている

このツアーに同行していたイスラエル人の女性兵士ケレン・グリーンブラット(19)も、同様な疑問を口にした。「民族紛争に関する話は1つもなかったと思う」と彼女は言う。「これじゃ、さまざまな立場の人と対話する機会もない。これって何なの?と思った」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中