最新記事

アメリカ大統領

「トランプは正気じゃない」──また浮上した「心の健康不安」説

Trump 'Is Mentally Ill,' Former Vermont Governor Says

2018年9月3日(月)16時40分
ジェイソン・レモン

トランプはマケインを敵視し「ベトナム戦争の英雄」とは認めなかった(ベトナム戦争戦没者慰霊碑に花輪を捧げるマケイン夫人と、マティス国防長官、ケリー首席大統領補佐官) Andrew Harnikl-REUTERS

<共和党の重鎮マケイン上院議員の死去をきっかけに、トランプの精神状態をめぐる懸念が再浮上している>

医師のハワード・ディーン元バーモント州知事が9月2日に米MSNBCの番組に出演し、ドナルド・トランプ米大統領の精神状態は異常であり大統領にふさわしくない、と語った。

「トランプは精神疾患だ、と私は長い間信じてきた」と、番組中のパネルディスカッションでディーンは言った。「病的に自己愛が強く、アメリカにとっていいことと、自分にとっていいことの区別がついていない」

ディーンの発言は、共和党の重鎮ジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)の死去に伴うトランプのちぐはぐな対応を受けたもの。トランプは、目玉政策だったオバマケア撤廃法案をつぶすなど、自分の政策に反対してきたマケインをたびたび攻撃してきた。8月25日にマケインが死ぬと、ホワイトハウスに掲げた半旗を上げたり下げたりして批判を浴びた。

さらに、9月1日にワシントン大聖堂で行われた告別式には、バラク・オバマ前米大統領を含む3人の歴代大統領が参列したが、トランプは出席しなかった。報道によれば、トランプは招待されず、ゴルフに出かけたという。

「大統領就任以来ずっとトランプは異端児で、あまり尊敬されているとは言えない」と、ディーンは分析する。「ニューヨークでビジネスをしていた頃も尊敬されなかったが、政治家になってからもだ」

70歳を過ぎたトランプが今更変わるはずはない、とディーンは付け加えた。

これまでにも多くの専門家が、トランプの精神状態に懸念を表明してきた。2017年10月には、27人の米精神科医と心理学者が連名で『The Dangerous Case of Donald Trump(ドナルド・トランプという危険な症例)』を出版。トランプは大統領職が務まるような精神状態ではないと警告し、一時は米ニューヨークタイムズ紙のベストセラーになった。

「安定した天才」と反論するも

やはりベストセラーになったトランプ政権の暴露本『炎と怒り』の著者マイケル・ウルフも、日常的にトランプの傍にいる側近たちは、トランプが正気を失いつつあることに気が付いた、と主張した。

怒ったトランプは今年1月、「私の2つの偉大な財産は、精神が安定していて頭がいいことだ」とツイート。「(精神的に)非常に安定した天才」と自画自賛した。

それに先立つ昨年12月、米エール大学医学大学院の臨床精神医学科助教を務めるバンディー・リーは、上下両院の議員に向けて意見書を提出した。

「トランプの精神状態がアメリカに及ぼす危険について、議員たちはとても懸念していた」と、リーは米CNNのインタビューで語った。「議員たちは、その懸念が民主党内で共有されていることは知っていたが、最終的には共和党の対応次第だ、と言った。(トランプの精神状態を)同じように懸念する共和党員の知り合いがいても、彼らがその懸念に対して行動を起こしてくれるだろうか、と危惧していた」

トランプの精神状態を憶測することを批判する専門家もいる。彼らが根拠にするのは、アメリカ精神医学会の行動規範である「ゴールドウォーター・ルール」だ。それは精神科医に対して、直接検査をしていない人の精神状態に関する見解を述べるのは非倫理的、と定めている。

だが2017年7月、アメリカ精神医学会は3500人の会員に対し、公的な人物についてはゴールドウォーター・ルールに縛られるべきではない、と通達している。

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産拡大を検討へ 日量5

ワールド

トランプ氏、ウクライナ防衛に「パトリオットミサイル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中