最新記事

日本が無視できない新興国経済危機

トルコリラ・銀行株が下落 財務相、経済に大きなリスクなしと言明 

2018年8月30日(木)08時42分

 8月29日、トルコのアルバイラク財務相(写真)は、同国の経済や金融システムに対する大規模なリスクは想定していないとの見解を示した。イスタンブールで10日撮影(2018年 ロイター/Murad Sezer)

トルコのアルバイラク財務相は、同国の経済や金融システムに対する大規模なリスクは想定していないとの見解を示した。現地紙ヒュリエットが29日報じた。

同報道が伝わる中、トルコリラは1ドル=6.49リラまで下落し、15日以来の安値を更新。銀行株<.XBANK>も1%下落した。

同紙によると、アルバイラク財務相は今週記者団に対し、「トルコ経済もしくは金融システムに対する大きなリスクは確認していない」と語った。低水準にある公共・家計債務や堅調な金融システムを理由に挙げたという。

しかし、トルコリラは今年約40%値下がりし、燃料費や食品価格の急上昇を招き、銀行や経済全体へのリスクが懸念視されている。当初はエルドアン大統領の中銀への影響が不安材料として注目されていたものの、米政府との対立が深まるなか、トルコ経済を巡る状況は悪化している。

クレディ・アグリコルのアナリストは、アルバイラク財務相の発言によって「投資家の間でトルコ政府がマクロ経済管理で厳しい舵取りを迫られているとの見方が強まる可能性がある」と述べた。

こうした中、ムーディーズは28日、トルコの金融機関20社を格下げし、下向きリスクが大幅に高まっている兆候があるとの認識を示している。

また、トルコ統計局がこの日発表した8月の経済信頼感指数は2009年3月以来の低水準となっている。

別の記者会見では、アルバイラク財務相は強力な財政政策が金融政策の支えになるとの考えを示したほか、インフレ抑制に向け一層の責任を負うと述べた。

投資家は来年トルコに一段の関心を示すとした上で、力強さが増していることが経済指標から確認できるだろうと語った。

アルバイラク財務相はさらに、米国との関係が悪化する中、トルコが欧州連合(EU)諸国との関係修復を望んでいることも示唆。その一環として、同相は今週パリを訪問し、仏財務相と会談した。

来週には英国、その後ドイツを訪問する可能性も示している。


[イスタンブール/アンカラ 29日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米エヌビディア、ノキアに10億ドル投資 AIネット

ビジネス

米UPSの7─9月期、減収減益も予想上回る コスト

ワールド

イスラエル首相、ガザ地区へ即時攻撃を軍に命令

ワールド

トランプ氏3期目「道筋見えず」、憲法改正は時間不足
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持と認知症リスク低下の可能性、英研究
  • 4
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 5
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 6
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 7
    「何これ?...」家の天井から生えてきた「奇妙な塊」…
  • 8
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 9
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 10
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 7
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中