最新記事

米中関係

予測不能トランプの研究に中国が選んだ米ベストセラーは『クズ白人』

China Turns to 'White Trash' Book to Understand Trump

2018年8月29日(水)17時00分
デービッド・ブレナン

コロコロと態度が変わるトランプ相手には、外交巧者の中国も対策が立てられない Leah MillisーREUTERS

<『ホワイトトラッシュ(クズ白人)』を読んだ中国エリートは、トランプの支持基盤が「クズ」と呼ばれていることに驚いた>

中国の名門シンクタンクCASS(中国社会科学院)は、ドナルド・トランプ米大統領が何を考えているのかを理解する必要に迫られ、非常に興味深い本を研究対象に選んだ。アメリカのベストセラー本『White Trash(クズ白人)』だ。

中国は今、歴史上でも例を見ないほど予測不能なアメリカ大統領と対峙している。悩み抜いたCASSは、アメリカにおける社会階層間の関係の歴史を分析したこの本を、権威ある推薦書リストに大きく取り上げたと、豪シドニー・モーニング・ヘラルド紙は伝える、

学会誌「美国研究(The Chinese Journal of American Studies)」のZhao Mei編集長は、忍び寄る米中貿易戦争に関して行われた8月27日のブリーフィングで記者たちに対し、『クズ白人』から得た情報についてこう語った。

「彼らは、中国が(アメリカ国民の)仕事を盗み、アメリカから企業を奪ったと考えている」。米国のプア・ホワイト(白人貧困層)の苦境を示す一例がオハイオ州だという。オハイオ州には、何世代にもわたって仕事がないにもかかわらず、州を離れない人たちがいる。

webw180829-whitetrash.jpgPenguin Random House

「トランプの支持基盤はそうした階層だ。中国としてどう対応したらいいのか、私にはわからない」とZhaoは言った。だが、トランプが2016年の大統領選挙に勝利して以来、多くの論者が、トランプの成功を説明する根拠を求めてきたのが『クズ白人』なのだ。

頭は弾劾と選挙で一杯?

同盟国も敵対国も、トランプの行き当たりばったりな外交への対応策を見つけ出そうとしている。CASS世界経済・政治研究所の上級研究員、余永定は、中国の政策決定者に今典型的な苛立ちを露わにする。

彼は貿易に関するトランプの「愚かな決断」を嘆き、トランプは現実の経済より国内世論に突き動かされている、と言う。「だがこの緊張の本当の原因は、トランプ自身の問題だ。中間選挙に勝ちたい、弾劾を逃れたい、その一心だ」と、余は付け加えた。

CASS米国研究所の白乙所長は、中国はトランプの行動に困惑していると言う。中国との貿易に関する議論で、アメリカ側の態度には「誠意がない」と指摘した。

こうした専門家の発言は、中国政府が苛立ちを募らせているしるしだ。貿易戦争が話題になった当初は、中国メディアは、トランプに対する個人攻撃を避けるように注意されていた。だが対立が長引き、その追加関税の対象範囲が拡大していくのに伴い、中国は、遠慮なく対決姿勢を表に出すようになっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

過度な為替変動に警戒、リスク監視が重要=加藤財務相

ワールド

アングル:ベトナムで対中感情が軟化、SNSの影響強

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅

ワールド

中国により厳格な姿勢を、米財務長官がIMFと世銀に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過去最高水準に
  • 4
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 5
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 7
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    ビーチを楽しむ観光客のもとにサメの大群...ショッキ…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中