最新記事

スポーツ

黒人はなぜ水泳が苦手なのか

Defeating Stereotype

2018年8月29日(水)16時00分
ベンジャミン・フィアナウ

ニューヨークで子供たちに水泳を教えるジョーンズ(2010年のイベント) Streeter Lecka/GETTY IMAGES

<黒人の子供たち向けの水泳教室で偏見を打破するメダリストの挑戦>

オリンピック選手が子供向けのワークショップや教室を開くのは珍しくないが、アメリカの競泳金メダリスト、カレン・ジョーンズがこのほど水泳教室を始めた理由は少し違う。黒人の子供たちに水泳を教えることで、「黒人は水泳をやらない」という世間の思い込みを打破しようとしているのだ。

米ABCテレビに出演したジョーンズは、子供も親も水泳を習うことに及び腰になる「一番の理由は恐怖心だ」と述べるとともに、歴史的に見てプールがいかに「人種差別的な場所」だったかについて語った。ジョーンズによれば、黒人がプールや海水浴場を怖がるのは、泳ぐのが苦手だというだけでなく、自分たちがどう扱われるか不安に思うことが多いからだという。

米自由人権協会(ACLU)の人種的正義プログラムの責任者を務めるデニス・パーカーもABCに対し、「(プールや海水浴場での)有色人種に対する排斥の歴史があった。プールで黒人が白人に暴力を振るわれたこともある」と述べた。パーカーによれば、白人には黒人は汚いとか不衛生だといった思い込みがあり、それが全米各地のプールでのあからさまな人種差別につながっているという。

また、親からなかなか泳ぎを教わることのできない有色人種の子供たちにとって、水泳教室は水難事故防止にも役立つとジョーンズは言う。

17年の米水泳財団の研究によれば、アフリカ系アメリカ人の子供の64%、ヒスパニックの子供の45%が「ほとんどもしくは全く」泳げないという。同財団によれば、アメリカで1年間に溺れて亡くなる子供の数は2010年以降、減少しているが、それでも溺死は14歳未満の子供の不慮の事故死の原因の第2位になっている。

また米疾病対策センター(CDC)によれば、黒人の子供たちが溺死する率は、同年代の白人の子供の3倍近いという。

「今も全米で1日に約10人が溺死している。(でも)簡単な対策がある。水泳のレッスンだ」とジョーンズは言う。「オリンピック選手を育てようというのではない。もちろんそういうことが起きる可能性もないとは言えないが。大切なのは泳ぎ方を学ぶこと、そして水のそばで安全に過ごせることだ」

<本誌2018年8月26日号掲載>

20210302issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

3月2日号(2月24日発売)は「ルポ新型コロナ 医療非崩壊」特集。第3波の日本で「通常」の医療体制は崩壊。だが現場には硬直したシステムを変え、命を守った人たちもいた――。

ニュース速報

ビジネス

中国製造業PMI、2月は50.6に低下 昨年5月来

ワールド

ミャンマー、治安部隊の発砲で死者7人 連日のデモ鎮

ワールド

情報BOX:来週開幕、中国全人代の概要と見通し

ワールド

ミャンマー国連大使、国軍に抵抗続けると表明 解任と

MAGAZINE

特集:ルポ新型コロナ 医療非崩壊

2021年3月 2日号(2/24発売)

第3波の日本で「通常」の医療体制は崩壊したが現場には硬直した体制を変え命を守った人々もいた

人気ランキング

  • 1

    バブルは弾けた

  • 2

    がら空きのコロナ予防接種センター、貴重なワクチンは余って山積み──イギリスに負けたEUの失敗

  • 3

    コロナ危機が招いた株価バブルは2021年に終わる

  • 4

    大口投資家がビットコインの買い占めに走り、個人投…

  • 5

    トランプの扱いを巡って米国共和党の内紛は三国志状…

  • 6

    タイガーが暴露症の女ばかり選んだ理由(アーカイブ…

  • 7

    弁護士の平均年収は4割減 過去十年で年収が上がった…

  • 8

    なぜドラえもんの原っぱには「土管」がある? 東京の「…

  • 9

    ビットコイン暴落、投資家は「全てを失う覚悟を」(…

  • 10

    フランス・リヨン市、環境派市長「給食を肉なしメニ…

  • 1

    屋外トイレに座った女性、「下から」尻を襲われる。犯人はクマ!──アラスカ

  • 2

    中国はアメリカを抜く経済大国にはなれない

  • 3

    バブルは弾けた

  • 4

    がら空きのコロナ予防接種センター、貴重なワクチン…

  • 5

    トランプにうんざりの共和党員が大量離党 右傾化に…

  • 6

    動画で見る、トランプ時代の終焉の象徴

  • 7

    弁護士の平均年収は4割減 過去十年で年収が上がった…

  • 8

    あらゆる動物の急所食いちぎり去勢も? 地上最凶の…

  • 9

    アメリカの顔をした中国企業 Zoomとクラブハウスの…

  • 10

    強大化する中国を前に日米豪印「クアッド」が無力な…

  • 1

    フィット感で人気の「ウレタンマスク」本当のヤバさ ウイルス専門家の徹底検証で新事実

  • 2

    ロシアの工場跡をうろつく青く変色した犬の群れ

  • 3

    屋外トイレに座った女性、「下から」尻を襲われる。犯人はクマ!──アラスカ

  • 4

    さようならトランプ、負債3億ドルと数々の訴訟、捜査…

  • 5

    新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」…

  • 6

    韓国メディアが連日報道、米日豪印「クアッド」に英…

  • 7

    バブルは弾けた

  • 8

    中国はアメリカを抜く経済大国にはなれない

  • 9

    全身が泥で覆われた古代エジプト時代のミイラが初め…

  • 10

    現役医師が断言、日本の「ゆるいコロナ対策」が多くの…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月