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中国、不正ワクチン事件の核心は「医療改革の失敗」

2018年8月21日(火)13時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

不正ワクチン問題で揺れる長春長生(吉林省長春市、2018年7月) REUTERS

中国の長春長生公司による不正ワクチン事件に関して習近平自身が会議を開き関係者に対する処分を決議した。ここまで重視する背景には「医療の市場化」問題があり、社会主義国家の根幹を揺るがしかねないからだ。

長春長生「不正ワクチン」事件

7月15日、中国の国家薬品監督管理局が吉林省長春市にある「長春長生生物科技有限責任公司」(以下、「長春長生」)にヒト用狂犬病ワクチンの生産停止を命じた。生産過程に記録改ざんがあり、「薬品生産品質管理基準」に対する違反行為にあたるからだ。

違反行為はこれに留まらなかった。

7月20日、吉林省食品葯品監督管理局(吉林省食葯監局)は長春長生により生産された三種混合ワクチンが基準に符合せず、品質不良の「劣薬」と判定されたことを発表。その劣薬ワクチン25万本が山東省疾病予防制御センターに販売され、そのうち約21.5万本が既に山東省などの児童に予防接種されていた。この時点で倉庫には186本しか残っていないとのこと。

これに関しては実は2017年10月27日に吉林省食葯監局が不正を把握して立件しており、10月31日には、山東省食葯監局がすでに山東省に販売された「不合格の三種ワクチン」を回収するように通達を出している(「魯食葯化市函(2017)52号」)。

しかしこの重要な通達は今年の7月18日になるまで中央政府の国家食葯監局に報告されておらず、長春長生がある吉林省食葯監局にさえも通報されていなかった。

その間に21.5万人に及ぶ児童に接種されていたのである。

南アフリカのヨハネスブルグで開催されるBRICS首脳会議に参加するため7月19日からアフリカ・中東諸国を訪問していた習近平国家主席は、ルワンダ訪問中の7月23日、不正ワクチン事件に対して「実に劣悪だ!あまりに衝撃的な事件だ」「人民の生命安全のデッドラインを死守せよ」と表明し、李克強国務院総理に徹底的な調査を指示した。それを受けて李克強は直ちに調査チームを結成して現地に派遣し、「相手が誰であろうと、人民の生命安全を脅かす者に対しては如何なる容赦もすることなく、徹底して調査せよ」という指示を出した。これら一連の流れを、中央テレビ局CCTVはトップニュースで盛んに扱い、中国共産党新聞網も報道した

チャイナ・セブンを招集し緊急会議

7月末に帰国した習近平は、7月31日に中共中央政治局会議を招集して経済問題を中心に討議し、8月5日から15日まで開催されたらしい北戴河会議で米中貿易戦争問題を中心に討議したあと、北京に戻るとすぐに(8月16日)チャイナ・セブン(中共中央政治局常務委員会委員7人)を集めて、常務委員会会議を開催した。

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