最新記事

韓国社会

「トランプ大統領に敬礼!」 北朝鮮への反転強硬姿勢に期待する韓国保守の高齢者たち

2018年8月8日(水)17時28分

8月6日、多くの韓国保守層にとって、歴史的な米朝首脳会談でトランプ氏が金氏を突如受け入れたことは「裏切り」にほかならない。だが、北朝鮮への積極行動を求めて定期的にソウルの街頭に集まる少数のトランプ支持者にとって、同大統領への信頼は揺るぎない。写真は、反北朝鮮・親米集会で米国旗に

韓国のテレビにトランプ米大統領の映像が映るたびに、ベトナム戦争に従軍した経験のある69歳のChung Seung-jinさんは厳かに敬礼する。

首都ソウルの自宅にある米国旗も、毎朝Chungさんから同様の敬意を払われる。

「毎日、トランプ大統領と米国旗に敬礼する。いかに彼を信頼しているかを表すためだ」と、うだるような夏の暑い日にソウル市街地で行われた反北朝鮮デモに参加したChungさんはロイターに語った。

「トランプ氏に敬意を表して敬礼する。世界のリーダーとして、自由の守護者としての彼の支配を支持している」

北朝鮮の指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に対するトランプ氏の当初の強硬姿勢を支持していた多くの韓国保守層にとって、シンガポールで6月行われた歴史的な米朝首脳会談でトランプ氏が金氏を突如受け入れたことは「裏切り」にほかならない。

トランプ氏は昨年、金氏を「ロケットマン」と揶揄(やゆ)していたが、会談後は「面白く」て「賢い」と述べ、独裁支配を維持する能力を称賛さえした。

「トランプ氏は金氏のことを『素晴らしい指導者』と呼び、彼を正当化した。われわれのような愛国的な市民は裏切られた気持ちだ」と、右派の大韓愛国党の趙源震(チョ・ウォンジン)党首は言う。

だが、北朝鮮への積極行動を求めて定期的にソウルの街頭に集まる少数のトランプ支持者にとって、同大統領への信頼は揺るぎない。

「今日もいつもと同じように、誠意を尽くしてトランプ氏に敬礼した」と、トランプ氏の大きな写真に会釈してデモ参加者のLee Yoon-joさん(76)は語った。

Leeさんが敬礼すると、デモ参加者は米国大使館前で巨大な米韓の国旗を掲げた。横断幕には、韓国語と英語で「米国は自由なコリアのため尽力するありがたい同胞の国だ」と書いてある。

朝鮮戦争(1950─53年)における米国の支援に対する感謝や、1970年代の韓国軍事政権による反共主義に、多くの高齢者が今も共感を寄せていると、聖公会大学の鄭昌大氏は指摘する。

「こうした高齢の保守層にとって、米国はただの同盟国というよりも『救世主』に近い」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

名門ケネディ家の多数がバイデン氏支持表明へ、無所属

ビジネス

中国人民銀には追加策の余地、弱い信用需要に対処必要

ビジネス

テスラ、ドイツで派遣社員300人の契約終了 再雇用

ビジネス

円債残高を積み増し、ヘッジ外債は縮小継続へ=太陽生
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 5

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 6

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 7

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 8

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中