最新記事

病害

病気で絶滅!? バナナは、もう食べられなくなるのか?

2018年7月23日(月)18時20分
松岡由希子

食卓からバナナが消える!? KalypsoWorldPhotography-iStock

<私たちの食卓からバナナが消える!? 病害によってバナナの絶滅リスクが指摘されている>

2016年時点でおよそ年間80億ドル(約8880億円)規模にのぼるバナナ産業。その生産量も2000年から2015年までに年率3.7%で増加し、2015年時点で1億1790億トンとなっている。バナナは、日本でも主要な果物として消費され、1人あたりの年間消費量は2009年時点で7.4キログラムだ。

世界では1000品種以上のバナナが生産されているが、なかでも生産量全体の約47%を占めている代表的な栽培バナナがキャベンディッシュだ。1ヘクタールあたりの収量が多く、茎が短いため台風などの自然災害にも影響を受けづらいのが特徴で、日本でも広く販売されてきた。

新パナマ病でキャベンディッシュの絶滅リスク

しかし、今、新パナマ病による病害によってキャベンディッシュの絶滅リスクが指摘されている。

パナマ病とはバナナの根の植物病害で、フザリウム属の真菌(病原体としての菌類)が根から侵入し、導管を通じて感染が広がると、維管束が破壊され、立ち枯れを起こす。

すでに新パナマ病の感染は、アジア・アフリカ・中東・オーストラリア・中米に広がっており、化学防除が感染防止に効果がないこともわかっている。

とりわけ、キャベンディッシュは、すべてが互いに同じ遺伝子を持ち、遺伝的多様性に乏しいため、いったん新パナマ病に感染すると、瞬く間に被害が広がってしまう。

期待の別種は、わずか5本の成木が確認されているだけ

このような課題の解決策として有力視されているのが、新パナマ病に免疫を持つとみられるマダガスカル原産の野生種とを組み合わせた品種改良だ。この野生種はマダガスカルバナナと呼ばれ、キャベンディッシュと異なって種子があり、味はよくない。

また、林縁に生息するため、自然災害や森林火災、森林伐採などの影響を受けやすく、現在、マダガスカル西部の熱帯雨林でわずか5本の成木が確認されているのみだ。

国際自然保護連合(IUCN)では、絶滅のおそれのある野生生物としてレッドリストに登録している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

プーチン氏、インドを国賓訪問 モディ氏と貿易やエネ

ビジネス

米製造業新規受注、9月は前月比0.2%増 関税影響

ワールド

仏独首脳、米国のウクライナ和平案に強い懐疑感 「領

ビジネス

26年相場、AIの市場けん引続くが波乱も=ブラック
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 8
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 9
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 10
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中