最新記事

韓国経済

韓国、文大統領「働き方改革」で広がる格差 低所得層にしわ寄せ

2018年7月22日(日)13時48分

政府が委託した最低賃金委員会は14日、来年の最低賃金を前年比10.9%増の8350ウォン(約835円)にすると発表し、懸念をさらに高めた。

小規模企業の業界団体である小商工人連合会は、改革履行を拒まざるを得ないと表明。「小規模事業主は岐路に立たされており、廃業するか人員削減か、選択を迫られている」と声明で述べた。

確かに、韓国企業の雇用は減速している。今年はこれまで、雇用の伸びは月間平均で14万2000人となっており、2008─09年の世界金融危機以降でもっともペースが鈍化している。

文大統領は16日、最低賃金の引き上げが、小規模事業主や低所得者に悪影響を及ぼしている可能性を認めたものの、所得増に重点を置いた政策に変わりはないと語った。

「最低賃金の大幅な引き上げは、低所得層が威厳ある生活を送れるようにするためだ。家計所得が上がれば国内需要を押し上げ、ひいては雇用創出につながる」と文大統領は閣僚に語った。また、政策によって窮地に立つ低所得者向けに補助金支給も検討していると付け加えた。

文大統領の人気は依然高い。南北首脳会談を受けてピークをつけた5月の支持率83%からは低下しているが、7月も69%と高い水準をキープしている。ただ、調査会社ギャラップ・コリアによると、支持率は4週連続で低下している。こうした数字に経済がどの程度影響しているかは定かではない。

残業禁止

造船大手の現代重工業<009540.KS>、小売り大手のロッテショッピングや新世界百貨店などは、社員の残業を防ぐため午後5時半にコンピューターの電源を切るようになった。

賃金コスト上昇のため、韓国では多くの店舗が閉店時間を午前0時から午後11時に早めている。

「従業員の勤務時間に柔軟性を持たせようとしており、店舗のほとんどで営業時間を短縮している」と、ロッテショッピングの社員はロイターに匿名で語った。

富裕層が集まるソウル江南区でフランスパンの店を営むLee Jae-kwangさんは、夕方早々に従業員を帰らせ、以前より1時間早い午後10時に自分で店を閉めると言う。「人を増やすことなど全く考えていない。大幅な賃金引き上げは私たちにとって、まさに経済的負担となっている」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

トヨタが通期業績を上方修正、販売など堅調 米関税の

ビジネス

アングル:米アマゾン、オープンAIとの新規契約でク

ワールド

ウォール街、マムダニ氏の「アフォーダビリティ」警戒

ビジネス

訂正マネタリーベース、国債買入減額で18年ぶり減少
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中