トランプ関税、企業が強いられるサプライチェーン再構築
ボストン・コンサルティング・グループのパートナー、ダスティン・バーク氏は先月ロイターに「製造業はもはや通商政策がより自由な貿易を志向するとは想定できない」と語った。
モルガン・スタンレーのアナリストチームの試算では、米国の輸入関税とそれに対して貿易相手国が既に導入したか導入を検討中の対抗措置は、世界貿易の1%に影響を及ぼす。しかし一部の企業にとって、その1%がカバーするサプライチェーンの割合はもっと大きい。
もっとも米国と、中国その他の貿易相手が繰り広げている争いがどう決着するのか見えていない以上、元手を回収するのに何年もかかるようなサプライチェーンの再構築に踏み切るのをなおためらう企業も多い。
暖房・空調製品メーカーのインガソル・ランド
複雑に入り組み、長年かかって築いたサプライチェーンを他の国や別の工場に切り替えるのも決して簡単なことではない。
企業によっては仕入れ契約を半年から9カ月先まで確定していたり、サプライヤーと数年にわたる約定を結んでいるケースもある。医療機器メーカーなら、サプライヤーの変更は規制当局の許可が必須という場合も少なくない。
例えば米がん治療医療機器のバリアン・メディカル・システムズ
一方、ネット接続の住宅室温調節機器を販売する新興企業ハイバーセンスは今月、中国からのサーモスタット輸入を打ち切ることを決定し、大急ぎでペンシルベニア州にサーモスタット製造施設を建設しようとしている。
同社幹部のボブ・フィールズ氏は「われわれは政治的環境に右往左往させられたくない。(新工場により)自分たちの事業をもっと大幅にコントロールするようになるだろう」と話した。
ただフィールズ氏は、新工場が稼働するまでは、中国からサーモスタットを輸入して25%の追加関税を支払わざるを得ず、顧客がコスト増に伴う値上げを受け入れてくれるのを期待していると付け加えた。
(Rajesh Kumar Singh記者)
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