最新記事
脳科学

サンスクリット語でマントラを暗唱すると、脳灰白質が増加することが明らかに

2018年6月8日(金)16時40分
松丸さとみ

Zzvet-iStock

サンスクリット語の翻訳で気づいた認知力のシフト

古代のインドで使われていた言語「サンスクリット語」でマントラ(日本語では真言とも言われ、神秘的な力を持つとされる語句)を記憶して暗誦すると、脳の灰白質が増加する――そんな調査結果がこのほど明らかになった。

調査を行ったのは、スペインのバスク認知脳言語センターで博士課程修了後の研究を行なっている、ジェームズ・ハーツェル博士が率いるチームだ。ハーツェル博士はもともと、サンスクリット語から英語への翻訳者として活躍していた。

しかし、サンスクリット語から英語に翻訳する際に脳の認知力が「深くシフト」することに気づいた。他の翻訳者たちも同じ感覚を抱いていたという。そこから好奇心が高じ、この言語をもっと研究したいと思ったのが、サンスクリット語と脳の関係について研究するきっかけだったという。

米国の科学誌サイエンティフィック・アメリカンのブログにハーツェル博士本人が書いた記事によると、実験はサンスクリット語のマントラを子供の頃から記憶し、暗誦し続けている伝統的古典学者の男性をインドのデリーで複数人集めて行われた。

インドの国立脳科学研究所にてMRIを使い、古典学者と、古典学者と同じ属性(性別、年齢、利き手など)の参加者を集めたコントロール・グループの脳の構造について比較した。

古典学者の脳灰白質は増加していた

結果は明白だった。コントロール・グループと比べ、サンスクリット語の古典学者たちの脳は、左右どちらも全体的に灰白質が10%大きく、大脳皮質もかなり厚くなっていた。

また、長期的・短期的な記憶を司る海馬のうち右側の海馬も、コントロール・グループと比べて古典学者たちの灰白質は大きくなっており、海馬の75%を占めていた。ハーツェル博士はサイエンティフィック・アメリカンのブログで、右側の海馬は特に音や空間、視覚などの「パターン」を司ると説明している。

オーストラリア公共放送SBSによると、ハーツェル博士は「海馬がこれほど拡大した様子を示す研究はこれまでに見たことがない」として、今回の研究で得られたデータが、脳内で記憶がどう作用するかを理解するのに役立つ、と述べている。

アルツハイマーなどの病気に効果も?

こうしたサンスクリット語による脳への影響を、ハーツェル博士は「サンスクリット効果」と呼んでいる。しかしSBSに対し博士は、こうした効果が、大量の文章を記憶することからのものなのか、サンスクリット語特有のものなのかは不明だとしている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国外相、イラン指導者殺害や体制転換の扇動「容認で

ワールド

OPECプラス8カ国、4月に増産開始で合意 イラン

ワールド

イラン首都照準に2日目攻撃、トランプ氏は反撃に警告

ワールド

プーチン氏、ハメネイ師殺害は道徳規範と国際法に違反
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作曲家が「惨めでもいいじゃないか」と語る理由
  • 4
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 5
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報…
  • 6
    【銘柄】「三菱重工業」の株価上昇はどこまで続く...…
  • 7
    【銘柄】「ファナック」は新時代の主役か...フィジカ…
  • 8
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 9
    「高市大勝」に中国人が見せた意外な反応
  • 10
    今度は「グリンダが主人公」...『ウィキッド』後編の…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 7
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中