イタリアの新連立政権、中枢に陣取る「ユーロ懐疑派」たち
6月2日、イタリアで発足した大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」による連立政権では、ユーロ懐疑派が中枢に陣取っている。写真は新首相に就任した法学者のジュセッペ・コンテ氏。ローマで撮影(2018年 ロイター/Tony Gentile)
仮にイタリアがユーロ圏から離脱するならば、金曜日夜になるだろう。政府高官は極秘に計画を練り上げ、当日夜になってから欧州各国に通知すると同時に、資本の国外流出を防ぐため、銀行と金融市場の閉鎖を命じる──。
これは2015年10月、経済問題専門のウェブサイトに投稿されたイタリアのユーロ圏離脱計画「イタリアのプランB」だ。この80ページの小冊子は当初、ほとんど注目されなかった。
だが、計画の立案者の1人である81歳のエコノミスト、パオロ・サボーナ氏が先週、右派政党「同盟」と新興組織「5つ星運動」が模索する連立政権の経済財政相候補として浮上した。
その後、ユーロ懐疑派が経済相に就くことをマッタレッラ大統領が拒否したため、サボーナ氏は欧州担当相候補に降格される格好となった。
関係者の話では、同盟の内部では、サルビーニ書記長がイタリアをユーロ圏離脱に導き混乱をもたらすとの懸念は全くないという。
それでも「プランB」は依然として、新政権の知的基盤を理解しようとする人々にとって必読書の1つに挙げられている。
事情に詳しい関係者によると、サボーナ氏らのユーロ懐疑派を閣僚に起用する上で、サルビーニ書記長は特に重要な役割を果たした。
新経済相に指名されたトルベルガタ大学のジョバンニ・トリア教授は「プランB」の策定には参加していないが、ユーロの支持者というわけでもない。
トリア氏は昨年、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁がユーロは「不可逆的だ」と述べた際、「ユーロを維持するために必要な改革の条件と時期を明確にしない限りは、ドラギ総裁さえも正しいとはいえない」と主張した。
だがトリア氏は1日夜、ロイターに「イタリアがユーロ圏を離脱しなければならないと言ったわけではない」と語った。
同氏は「欧州をどのように改革するかの議論は、ユーロ圏全体とイタリア国内で進行中だ。イタリアにはユーロ離脱を求める政治勢力はない」と話した。