最新記事

貿易戦争

中国、米中通商協議で「米国が関税導入なら通商合意は無効」と警告

2018年6月4日(月)08時03分

6月3日、北京で開かれていた米中通商協議が終了した。写真は中国の劉鶴副首相(右)とロス米商務長官、北京で代表撮影(2018年 ロイター)

北京で開かれていた米中通商協議が3日に終了した。中国は、米国が関税やその他の貿易制裁を導入した場合、貿易や経済を巡る両国の合意は全て効力を失うとする声明を発表した。

声明は、中国の劉鶴副首相とロス米商務長官の会談後に新華社を通じて発表された。

新たな合意への具体的な言及はなく、先月米ワシントンで開かれた前回会合で合意した中国による米製品・サービスの大幅な輸入拡大について、「合意を実行するため、両国は農業やエネルギーなど様々な分野について良い対話を行い、前向きかつ具体的な進展を遂げた」と表明。詳細は「両国の最終確認」次第とした。

新華社は「改革・開放や内需拡大は中国の国家戦略だ。われわれが確立したリズムは変わらない」とし、米国を含む世界各国からの輸入拡大に前向きな姿勢は一貫していると強調した。

その上で、米中の合意は「両国が互いに歩み寄り、貿易戦争を行わないことを前提とすべきだ」とし、「米国が関税引き上げなど貿易制裁を導入すれば、両国が交渉した全ての経済・貿易合意は効力を失う」と警告した。

米代表団やロス長官は現時点でコメントを発表していない。

ワシントンで開かれた前回会合の終了後には、両国が共同声明を発表した。

ただ、米政府はその後、500億ドル相当の中国からの輸入品に関税をかける方針は変えていないとしたほか、中国企業による米国への投資制限も進める構えを示した。

中国共産党機関紙「人民日報」系の環球時報(電子版)は論説記事で、米国には方針を転換し、新たな要求を提示する傾向があることから、中国は長期戦に備える必要があると指摘。「米国は関税と輸出拡大の両方を得ることはできない」とし、「米中協議はなるべく多くの共通利益を見いださねばならず、米国の一方的な利益に傾くべきではない」とした。

新華社も論説記事で、米国はさらなる方針転換や挑発で中国を試すべきではないとし、「貿易戦争は望まないが、恐れもしないという中国政府の姿勢は変わってない」とくぎを刺した。

これより先、ロス長官は劉副首相との会談の冒頭、記者団に対し、これまでの米中協議について「友好的かつ率直に行われており、具体的な輸出品目について有益な議題について話し合った」と評価した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240423issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月23日号(4月16日発売)は「老人極貧社会 韓国」特集。老人貧困率は先進国最悪。過酷バイトに食料配給……繫栄から取り残され困窮する高齢者は日本の未来の姿

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

24年の独成長率は0.3%に 政府が小幅上方修正=

ビジネス

ノルウェー政府系ファンド、ゴールドマン会長・CEO

ビジネス

米株「恐怖指数」が10月以来の高水準、米利下げや中

ビジネス

中国大手銀5行、25年までに損失吸収資本2210億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中