最新記事

南シナ海

南シナ海人工島に中国の「街」出現 周辺国の心配よそに軍事拠点化へ

2018年5月30日(水)12時45分

スービ礁は、中国がスプラトリー諸島に設けている7つの人工拠点のうち最大のものである。いわゆる「ビッグスリー」、すなわちスービ、ミスチーフ(美済)、ファイアリークロス(永暑)の3環礁には類似のインフラが整備されている。ミサイル発射台、長さ3キロメートルクラスの滑走路、広大な格納庫、人工衛星や外国の軍事活動・通信を追跡できるさまざまな設備などだ。

アースライズの分析によれば、ミスチーフ礁とファイアリークロス礁には、それぞれ約190の独立した建造物・構造物が存在する。以前は公表されていなかったデータは、ベトナム、マレーシア、台湾、フィリピンが占有しているものも含め、南シナ海の60以上の島嶼・岩礁における建造物数を詳述している。

このデータは、ベトナムが占有するスプラトリー島、フィリピンが占有するティトゥ(タガログ語名・パグアサ)島、台湾が占有するイトゥアバ(台湾名・太平)島など、一部の島嶼ではインフラがかなり整備されていることを示しているが、中国政府による規模と整備水準はライバルを圧倒している。

スービ礁上の建造物の数は、中国政府が実効支配するパラセル(西沙)諸島のウッディー(永興)島の規模に匹敵する。パラセル諸島はスプラトリー諸島よりもはるかに中国に近いが、ベトナムもその領有権を主張している。

ウッディー島は基地・監視哨であり、他国の駐在武官によれば、南シナ海全域にわたる師団本部として、人民解放軍の南部戦域司令部に直属しているという。

コー氏や他の専門家によれば、スービ、ミスチーフ、ファイアリークロス3礁それぞれの施設に、1500─2400人規模の連隊が駐屯可能だという。

中国の正確な意図は依然として不明であり、複数の専門家は、いわゆる「航行の自由」作戦による哨戒など米国の活動を中心に、東南アジア地域における安全保障の動向を中国政府が脅威に感じるかどうかによって大きく左右されるだろうと話している。

ロイターはスービ礁上の構築物や想定される用途について中国国防省に問い合わせたが、回答は得られなかった。

中国政府は一貫して、領有権を主張している島嶼上の施設は民生用および必要最低限の自衛目的のものだと主張している。中国は、米国が「航行の自由」作戦によって同地域を軍事問題化していると批判する。

政府の支援を受ける中国南海研究院のディン・デュオ研究員は、民生用インフラを保護するため、スプラトリー諸島における軍事的プレゼンスを中国政府は必要としている、と言う。

「どの程度大きなプレゼンスになるかは、南沙諸島に関して中国が今後行う脅威評価次第である」と、同氏は中国語での呼称を用いて述べた。

「特にトランプ氏が大統領に就任して『航行の自由』作戦が強化されて以来、南沙地域は厳しい軍事的圧力にさらされている。したがって中国は脅威評価を引き上げてきた」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中