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トルコの強権エルドアンに対峙する新星は「クルドのマンデラ」

2018年5月22日(火)17時30分
ヘンリ・バーキー(リーハイ大学教授)

デミルタシュは、若くてテレビ映りがよく、鋼の意志を持った政治家だ。被告人として臨んだ法廷では、法律の専門知識と弁舌を武器に政府の主張を完全に打ち砕いた。この点も、南アフリカで迫害されていた頃のマンデラを連想させる。

デミルタシュはトルコ人とクルド人の共存を訴えることで、トルコの政治に新風を吹き込んだ。HDPは、トルコ政府に対して武力闘争を続けてきたクルド労働者党(PKK)の支持者に加え、これまでAKPを支持してきた保守系クルド人の支持も得ようとしている。エルドアンが国内外でクルド人への敵対的な政策を実行してきた結果、最近は保守系クルド人のAKP離れも見られる。

いまエルドアンは、ジレンマに直面している。司法を完全に統制下に置いているので、デミルタシュを釈放するか、獄中につなぎ留めておくかは自由に決められるが、どちらを選んでも好ましい結果は待っていない。

デミルタシュを釈放すれば、最も手ごわい政敵に自由を与えることになる。しかし、獄中にとどめ置き、立候補の権利を否定すれば、国内のデミルタシュ支持者だけでなく、外国政府や国際NGOの反発を買う。

そして、事実無根の罪で長期間投獄すれば、デミルタシュがカリスマ性を獲得し、「クルドのマンデラ」になる可能性がある。エルドアンにとっては望ましくないシナリオだろう。

From Foreign Policy Magazine

[2018年5月22日号掲載]

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