最新記事

北朝鮮

金正恩の微笑みは信じるな──北朝鮮元幹部

2018年5月16日(水)16時50分
ソフィア・ロット・ペルジオ

スッポン養殖工場を視察する金正恩 KCNA-REUTERS

<北朝鮮が突然、南北閣僚級会談をキャンセルした。イケイケ・ムードはどこへ行ったのか? 北朝鮮元幹部は警告する>

北朝鮮の元高官で脱北者の太永浩(テ・ヨンホ)が、北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)の「微笑み外交」には気を付けろと世界に呼びかけている。韓国との南北首脳会談で見せた愛想のよさとは裏腹に、金は気性の荒い暴力的な人間なのだ、と。

2016年に亡命するまで北朝鮮の駐英公使を務めていた太は、政権内部者としての経験を綴った自叙伝を5月14日に出版し、ソウルで記者会見を開いた。

太は会見の場で、金が残忍な行動を見せたいくつかのエピソードを紹介した。韓国の通信社「聯合ニュース」が太の話として伝えたところによれば、金は2015年、スッポン飼育場管理者の銃殺刑を命じた。金が視察した際に、スッポンが多数死んでいたことが処刑の理由だったという。 

このエピソードは、ニュースサイト「デイリーNK」が、匿名の情報筋の話として2015年7月に最初に報じた。北朝鮮国営メディアの5月の報道を受けたものだが、そこでは金が激怒したことは報じていたが、処刑についてははっきり言及していなかった。

非核化をするつもりはない

金の激しい気性を示す別の例として太は、改装後の再開を控えた平壌の「祖国解放戦争勝利記念館」で2013年7月に起きた火災に対する反応を紹介した(この火災は、過去に報道されていない)。太によれば、金は「水びたしになった記念館の地下に高級靴を履いたまま突進」し、火災に対する注意を怠ったとして責任者を厳しく叱責したという。

元北現在、韓国の諜報機関、国家情報院(NIS)関連のシンクタンクで働く太は、トランプ政権が求める「完全かつ検証可能で不可逆的な核放棄」に向けた金の意欲に疑念を示す。

金が意図しているのは、完全ではなく、「十分に」検証可能で不可逆的な核放棄だという。つまり、核兵器を減らしはするが、完全には放棄しないということだ。「最終目標は、非核化したように見える核保有国になることだ」と太は「コリア・タイムズ」にで述べている。

太がかつて所属していた北朝鮮外務省は5月12日、北朝鮮北部にある豊渓里(プンゲリ)核実験場の廃棄計画を発表した。北朝鮮分析サイト「38ノース」の分析によれば、5月7日の衛星画像ですでにその解体が「かなり進行」していることが示されていた。

だが、太の意見によれば、金政権が米国の提示する条件での非核化に同意するのは、独裁政権維持の保証が得られる場合に限られるという。「北朝鮮の言う体制保証とは、金一族による永遠の権力継承を可能にすることだ」と太は述べている。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三菱商事、今期26%減益見込む LNGの価格下落な

ワールド

インド4月自動車販売、大手4社まだら模様 景気減速

ワールド

米、中国・香港からの小口輸入品免税撤廃 混乱懸念も

ワールド

アングル:米とウクライナの資源協定、収益化は10年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中