最新記事

北朝鮮

北の「日本メディア外し」は日本への歪んだ求愛

第3回南北首脳会談で 「板門店宣言」を発表する金正恩委員長 Korea Summit Press Pool/Reuters

北朝鮮は非核化の証拠に坑道爆破の現場を「日本を外した」関係国に公開報道すると発表。この「日本外し」は日朝首脳会談に向けた条件闘争の一環で、日本への期待感の裏返しと見るべきだろう。

北朝鮮、非核化アピールのため報道公開――日本外し

北朝鮮の朝鮮中央通信は、5月12日、豊渓里(プンゲリ)の核実験場を廃棄する式典を、23~25日の間に実施すると発表した。坑道の爆破と入口の閉鎖、および地上の設備や施設の撤去などの現場を、中米露英韓5ヵ国のメディアに公開するとのこと。ここに「日本」がないことが注目される。

もし関係国というのであれば、六者会談のメンバー国である「中米露日韓と北朝鮮」の中の「中米露日韓」のメディアに対して公開すると考えるのが一般的だろうが、「日本」の代わりに「英国」が入った。

英国は北朝鮮と国交があり、かつリビアにおける核放棄を実施させる際に、米英が調査して関連施設を国外に運び出して解体廃棄するという作業に当たった国である。その意味で英国が入るのは理解できないではない。

しかし北朝鮮は、「日本が拉致問題を提起することによって朝鮮半島の平和的な対話路線を阻害しようとしている」と言ったり、「日本は1億年経っても北朝鮮の神聖なる土地を踏むことはできないだろう」といった趣旨のことを言ったりなど、日本を酷評する言動を繰り返している。

その上での「日本メディアの除外」は、明らかに「日本外し」を意識していると見るのが妥当だろう。

日本外しは日本への「歪んだ求愛」

この「日本外し」は、明らかに日本への「歪んだ求愛」とみなすことができる。

なぜならこれまで何度も書いてきたように、北朝鮮は経済的に中国に呑みこまれたくないと思っているからだ。朝鮮半島はその長い歴史において、中国の清王朝時代まで中国に対する朝貢外交によって成立してきたような国だ。

『史記』などによると「朝鮮」という名称は紀元前4世紀辺りからあったとされているが、中には「東方(=朝)の鮮卑」という言葉から「朝鮮」と呼ぶようになったという説もあるほど、朝鮮の中国への隷属性は長きにわたって続いてきたことだけは確かだ。

日本による統治は1910年から1945年。いわゆる「日帝36年の恨み」はここから来ている。アメリカによる韓国の統治は、大韓民国誕生と朝鮮戦争休戦協定などの節目を大雑把に見ると、1948年から今日までとなり、概ね70年。日米同盟を考えると日本への恨みは「36年+70年=106年」となる。

そこで金正恩政権では「日米は100年の宿敵、中国は1000年の宿敵」という言葉が出てきたものと考えられる。

したがって、その中国には唯一の軍事同盟国として対米牽制の砦にはなっていてほしいが、決して経済的にまで中国に依存しきって中国の支配下に入りたくはない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

印機墜落、死者260人超 政府が同型機の安全点検検

ワールド

焦点:「減税より賃上げ」巡り曲折、好経済へ効果未知

ワールド

政府、骨太方針を閣議決定

ビジネス

ユーロ圏の鉱工業生産と輸出、4月は減少 関税の混乱
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 6
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 9
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中