最新記事

サイエンス

いてもいなくても関係ない! 環境DNA手法を駆使してネッシーに挑む

2018年5月30日(水)18時30分
松丸さとみ

gremlin-iStock

<「環境DNA手法」と呼ばれる最新科学を駆使してネッシーの存在を確認する新たなプロジェクトが立ち上がった>

「ネッシー写真は嘘」、それでも根強い人気

ネス湖のネッシーといえば、英国スコットランドで長らく語り継がれている、おそらく世界で一番有名なモンスター、今風に言うとUMA(未確認動物)だろう。恐竜時代からひっそりと生きながらえてきた首の長い「プレシオサウルス」か、チョウザメ、または巨大ナマズがその正体と考えられている。

しかし1934年に撮られた、ネス湖から首を出すネッシーの有名な白黒写真は、おもちゃの潜水艦で作ったもので壮大な嘘だった、と撮影から実に60年後の1994年、撮った本人が亡くなる前に暴露した......という話はよく知られている

だが、「だからといってネッシーがいないわけではない」と考える熱心なネッシーファンは多い。ネス湖はスコットランド有数の観光スポットで、ネッシーがスコットランドにもたらす経済効果は年間2500万ポンド(約36億円)とも、6000万ポンド(約87億円)とも言われている。

そして今、「環境DNA手法」と呼ばれる最新科学を駆使してネッシーの存在を確認する新たなプロジェクトが立ち上がった。

環境DNA手法を駆使してネッシーに挑む

ネッシーに最新科学で挑むのは、ニュージーランドにあるオタゴ大学のニール・ジェメル教授率いるチームだ。米雑誌タイムによると、ジェメル教授はネッシーを信じてはいない。しかしネッシーが存在するという仮説を検証したいと語り、もしいなかったとしても、今回行う調査から、ネス湖に生息する生物の多様性が分かるだろう、と述べている。

6月に行われる調査では、ネス湖のさまざまな場所と深さの300地点で水を採取して、分析を行う。ジェメル教授が科学系のニュースサイト「Phys.org」に話した内容によると、動物が動くと、その環境には皮膚やウロコ、羽、毛皮、大小便などが残る。

採取した水からそのような有機物質をフィルターしてそこからDNAを抽出し、出てきた結果を10万種に及ぶ既知の種が網羅されたデータベースに照らし合わせる。そしてこれらの種と比較して、そのDNAの持ち主がだいたいどのあたりに分類されるのかを判断できるという。もしすでに絶滅した海生爬虫類に類似した配列が見つかったら、「やはりネッシーはいた」ということになるわけだ。年内には結果が出る見込みだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中