最新記事

技術革新

ブロックチェーン、旅行業界に激震もたらすか ネット代理店排除から手荷物追跡まで

2018年4月13日(金)08時43分

ワインディング・トゥリーのマクシム・イズマイロフ最高経営責任者(CEO)は、仲介業者は新たな技術を踏まえて、手数料体系を見直すなどビジネスモデルを修正しなければならなくなると指摘。OTA各社は手数料率を現在の20─25%前後から5%程度に引き下げざるを得なくなる可能性があるとの見方を示した。

これに対しGDS企業各社は、ブロックチェーン技術では提供できないサービスやリアルタイムの価格設定の仕組みを提供していると強気の姿勢を崩していない。

セイバーのディレクター、フィリップ・リケンズ氏は、複数の情報源を統合して予約を可能にする仕組みは、ブロックチェーンでは実現できないと主張した。

またトラベルポートのバイスプレジデント、トニー・ハード氏は、ブロックチェーンを使った取引は従来の手法ほど短時間で終わらないと指摘。「取引が確定するのに10分も待たなければならないのなら、リアルタイムの環境とはなり得ない」と疑問を呈する。

一方、旅行関係の情報技術を手掛ける企業は、新たなサービスにブロックチェーンをどう活用するか試行錯誤が続く。

航空輸送関連の情報技術企業SITAは、ヒースロー空港やIAGと組み、運航情報の共有にブロックチェーンを活用できるかどうかを検証している。

SITAの首席エンジニア、ケビン・オサリバン氏は、それぞれの空港や航空会社が独自に運航データベースを保有している現状では、正確な運航状況を把握するのが難しいが、各空港と航空会社が自社のデータをブロックチェーンに反映させてデータを共有できれば、問題が解決されると説明した。

またアマデウス・イノベーション・パートナーシップの責任者サラ・パバーヌ氏は、手荷物の追跡やロイヤルティプログラム、旅客の本人確認、国境をまたがる料金の支払いなどでブロックチェーンが役立つ可能性があると話した。

国際航空運送協会(IATA)は航空会社と旅行代理店間の決済システムにブロックチェーンを使う試験を進めている。この場合の費用は、ペイパルなどが提供する決済システムよりも低く抑えられる可能性があるという。

(Victoria Bryan記者)

[ベルリン 10日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、貿易協定後も「10%関税維持」 条件提

ワールド

ロシア、30日間停戦を支持 「ニュアンス」が考慮さ

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円・ユーロで週間上昇へ 貿易

ビジネス

米国株式市場=米中協議控え小動き、トランプ氏の関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 5
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 6
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 7
    「金ぴか時代」の王を目指すトランプの下、ホワイト…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 10
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 10
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中