最新記事

南北会談

朝鮮戦争「終戦協定」は中国が不可欠──韓国は仲介の資格しかない

2018年4月26日(木)13時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

安倍首相と電話会談した文在寅大統領(写真は別のときのもの)Kim Hee-Chul/ REUTERS

安倍首相と韓国の文在寅大統領との電話会談で「終戦宣言」なら「最低でも南北と米国の3者による合意が必要だ」と述べられたようだが、「終戦協定」ならば「休戦協定」の署名国である中国を欠かすことはできない。

安倍首相と文在寅大統領との電話会談

4月25日、安倍首相と韓国の文在寅大統領との間で電話会談が行われ、「終戦宣言」に関して、「最低でも南北と米国の3者による合意が必要だ」と述べたと報道されている。両者のどちらが言い出したかは知らないが、少なくとも両者は「韓朝米の3者」という認識を共有したことは確かだろう。

だとすれば、これは朝鮮戦争の休戦協定が持っている意味と、現在の朝鮮半島問題の基本的原因を無視しており、問題を生む。

休戦協定の署名者は

朝鮮戦争(1950年6月25日~1953年7月27日)の休戦協定は、1953年7月27日に板門店で

 国連軍のクラーク・総司令官

 中国人民志願軍の彭徳懐・総司令官

 朝鮮人民軍の金日成・最高司令官

の3者の署名により締結されたものである。

韓国(大韓民国)は国連軍の中に組み込まれていたから、署名者の中には入っていない。国連軍にはアメリカ、韓国、イギリス、フランスなど22カ国が参加しているが、休戦協定の署名国にはそのどの国も入ってないことと同様に(同等に)、韓国も入っていないのである。

したがって、もし、この休戦協定に終止符を打って、正式に「終戦協定(平和条約)」を締結するのであれば、休戦協定の署名者である中国を無視することはできないということになる。

むしろ米中朝の3カ国代表が署名すべきで、韓国はあくまでも仲介役を果たす資格しかない。

特に朝鮮戦争に参戦した兵力は、北朝鮮側としては

 北朝鮮:80万人

 中 国:135万人~200万人(諸説有り)

 (旧)ソ連:2.6万人

であるのに対し、国連軍側は上位3カ国だけを書くなら

 アメリカ:48万人

 韓  国:59万人

 イギリス:6.3万人

などであり、中国人民志願軍が圧倒的に多い。この中国を入れずに「少なくとも韓朝米の3カ国で」という認識を共有した日韓首脳は、この歴史的事実を無視したことになり、言葉には注意すべきだろう。

朝鮮半島問題の根幹

そもそも朝鮮半島問題の起因は、休戦協定(第4条60節)で「休戦協定締結後3ヵ月以内に朝鮮半島に駐留する全ての(南北朝鮮以外の)第3国の全ての軍隊は朝鮮半島から撤退すること」と書かれており、アメリカはそれに署名して撤退を誓いながら、同時に韓国との間で「米韓相互防衛条約」(米韓軍事条約)を締結したことにある。そこには「米軍は(永遠に)朝鮮半島から撤退しない」という趣旨のことが書いてあり、完全に相矛盾する条約に米韓は署名したことになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベトナム対米黒字、1月は前年比30%増 中国からの

ビジネス

TOPIX採用企業は今期0.2%増益の予想、来期も

ワールド

インド中銀、予想通り政策金利据え置き スタンスは「

ビジネス

トヨタが3年ぶり社長交代、近CFOが昇格 佐藤氏は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 2
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 5
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 6
    「反トランプの顔ぶれ」にMAGAが怒り心頭...グリーン…
  • 7
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 8
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 9
    関税を振り回すトランプのオウンゴール...インドとEU…
  • 10
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中