最新記事

性犯罪

インド8歳少女のレイプ殺人で、少女への性的暴行を死刑に

2018年4月23日(月)17時07分
ロバート・バレンシア

インド西部のアーメダバードで4月21日、11歳の少女をレイプし殺害したとして逮捕された容疑者(覆面の男) Amit Dave-REUTERS

<少女を狙った残虐な事件が相次ぎ世論の怒りは高まっているが、レイプが減る気配はない>

4月21日、インド政府は閣議で12歳未満の女児への性的暴行罪に死刑を適用することを認める政令を承認した。背景には、相次ぐ性的暴行事件に対する世論の激しい怒りがある。

ロイター通信によれば、今回の政令はナレンドラ・モディ首相が招集した緊急閣議で決められた。16歳以下の少女への性的暴行の厳罰化という刑法の修正条項も含まれている。

インドでは8歳の少女が性的暴行された末に殺されるという残虐な事件が起き、社会に衝撃を与えたばかり。ワシントン・ポストが当局者の話として伝えたところでは、被害者は自分のスカーフで縛られ、男たちに繰り返し暴行されたあげく、頭蓋骨を石で打ち割られていたという。この事件はインドで深刻になりつつある宗教的・民族的分断をも浮き彫りにした。被害者の少女はイスラム教徒で、容疑者の男たちはヒンズー教徒だったのだ。

与党の政治家が関与したとされる事件も

またワシントン・ポストによれば、モディ首相の与党インド人民党(BJP)の政治家も未成年者に対する性的暴行で逮捕・起訴された。これに対してインド全土で抗議運動が起き、モディが女性を守るために十分な対策を採っていないとの批判が多くの人々から上がった。怒りの声は同じ与党内部からも聞かれた。

「BJPはこうした犯罪者たちの弁護役ばかり務めてきた。まったく許されることではない」と、ヤシュワント・シンハ元財務相は同紙に述べた。

国民からの激しい突き上げを受けてモディは「幼い少女への性的暴行というのは本当に胸が締めつけられる事件だ。これほどひどい道の踏み外し方はないと思う。性的暴行は性的暴行だ。娘に対するこんな不正義を許しておくことがどうしてできるだろう」と述べた。

こうした事件から思い出されるのが、12年にデリーのバスの車内で、理学療法を学んでいた23歳の女子学生が6人の男に輪姦された痛ましい事件だ。

世論の怒りにもかかわらず、インドの性的暴行事件が減る気配はない。16年の発生件数は4万件を超え、被害者の40%は子供だったとロイターは伝えている。

地元紙タイムズ・オブ・インディアによれば、政令は承認を得るためラム・ナト・コビンド大統領のもとに送られる。

(翻訳:村井裕美)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中