最新記事

韓国事情

就職難の韓国、人手不足の日本──日本での就職を後押しする韓国政府 

2018年3月27日(火)15時00分
佐々木和義

韓国の若者はかつてない就職難に見舞われている Kim Hong-Ji-REUTERS

<就職難の韓国と求人難の日本の財界が協調し、日本で就職する韓国人がはじめて2万人を超えている>

韓国の若者はかつてない就職難に見舞われている。「災難」とも表現されるレベルで、その対策として韓国産業人力公団や韓国貿易協会、雇用労働部など韓国の政府機関が日本の人材紹介会社と協力して、韓国の若者の日本就職を推進。2017年には就業ビザを得て日本で就職した韓国人は、はじめて2万人を超え2万188人に達している。

2月の韓国の失業率は4.6%で前年2月の4.9%をわずかに下回り、15歳から29歳の公式な青年失業率も9.8%で前年第4四半期を下回った。しかし、2月に受付が行われた9級公務員試験の受験者が失業者から除外されていることから、就職準備者や就職断念者を含む実質的な失業率はより高いとみられている。

日本での就職が注目されている

韓国内での就職は困難とみて、海外に目を向ける若者が増えており、なかでも日本の就職が注目されている。韓国から近く、質の良い仕事が多いことに加え、外国人を受け入れる環境にあるからだ。

日本の2018年1月の有効求人倍率は1.59倍で、失業率は自然失業率3%を下回る2.4%となっている。海外事業の拡大と人口減少などが重なって、経済界は日本人だけで需要を満たすことは難しいとみる。

日本の就職を支援する「日本海外就業戦略説明会」が2018年3月23日にソウルのCOEXで開催されたが、3回目となる今回はおよそ800人の参加申し込みがあり、関心の高さがうかがわれた。

日本大使館の羽鳥公使が日本の若者の雇用状況について講演し、続いてマイナビコリア代表の金保庚(キム・ボギョン)氏が自身の日本での就職経験や日本企業の雇用事情などを説明。日本企業への就職経験者が、韓国と比べて資格等のスペックより、やる気や潜在能力を重要視する日本企業の特徴を紹介した。

求人難の日本と就職難の韓国の財界が協調

日本の経団連と韓国の全国経済人連合会は、2017年10月20日に東京で開催した「第27回日韓財界会議」で、日本の求人難と韓国の青年求職問題の解決を目指し、両団体が共同で事業を推進するとしている。

8月には大韓貿易投資振興公社(KOTRA)とパソナグループが東京で面接会を実施し、今年5月には雇用労働部が日本企業への就職を想定した海外就職面接会をソウルで主催する。

2018年3月15日、日本の省庁に相当する複数の部で構成された雇用委員会は、若者の中小企業への就職支援や起業支援と合わせて「海外地域専門家養成方策」を公表した。2022年までに日本やASEANなど、合わせて1万8000人の海外就業を支援する内容で、なかでも日本の就職支援が中心となっている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中