最新記事

がん

ゾウの「ジャンクDNA」にがん抑制のメカニズムが存在することがわかった

2018年3月14日(水)18時00分
松岡由希子

ヒトの100倍もの細胞を持ち、70年程度生存するゾウ PobladuraFCG-iStock

<機能や役割が明らかになっていない象の「ジャンクDNA」にがん抑制の機能が存在することがわかった>

哺乳動物のゲノム(全遺伝情報)のうち、タンパク質を生成する配列はわずか2%にすぎず、残りの大部分は「ジャンクDNA(ガラクタ遺伝子)」と呼ばれ、その機能や役割はいまだ明らかにされていない。

動物のジャンクDNAを解析

米ユタ大学のクリストファー・グレッグ准教授を中心とする研究プロジェクトは、「ジャンクDNAの中に、疾病をコントロールする役割を担うものがあるのではないか」という仮説のもと、陸生哺乳類のゾウとジュウサンセンジリス、空中哺乳類のコウモリ、海洋哺乳動物のシャチとイルカ、地下哺乳類のハダカデバネズミを対象に、それぞれのジャンクDNAを解析し、その成果を米学術雑誌「セル」で発表した。



ゾウの巨体や、コウモリの翼のように、種の特徴は、急速な進化を遂げ、種独自の特性と関連するDNA領域、すなわち「AR(加速した領域)」によってもたらされている。

この研究プロジェクトでは、ジャンクDNAの解析により、種ごとのARを特定。DNA修復と関連するゾウのゲノムをはじめ、手足を変形させて翼に発達させたコウモリのゲノム、高圧環境に適応させるシャチやイルカのゲノム、肌の色素沈着と関連したジュウサンセンジリスのゲノム、弱視と関わりのあるハダカデバネズミのゲノムが明らかとなった。

3つのゾウのゲノムを特定

とりわけ、この研究プロジェクトが特定したFANCL、VRK2、BCL11Aという3つのゾウのゲノムは、DNA修復と関連するものとして注目されている。

ゾウは、ヒトと比べて、腫瘍を抑制する「p53遺伝子」の数が非常に多いことがわかっているが、これに加えて、ゾウのARに突然変異やがんを抑制するゲノムが少なくとも3つ存在することになるわけだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ほぼ横ばい、経済指標や企業決算見極め

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米指標やFRB高官発言受け

ビジネス

ネットフリックス、第1四半期加入者が大幅増 売上高

ビジネス

USスチール買収計画の審査、通常通り実施へ=米NE
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中