最新記事

米外交

ユン特別代表退任で揺れるトランプ政権の対北朝鮮外交、後任は?

2018年2月28日(水)18時20分
ソフィア・ロット・ペルシオ

北朝鮮問題を打開する突破口が開いた今、ユンは米朝交渉で重要な役割を果たすと見られていた Lucy Nicholson-REUTERS

<せっかく北朝鮮が対話に意欲を見せ始めたというのに、対北交渉責任者が退任、駐韓米大使は空席、有力候補だったビクター・チャはトランプ政権と意見対立......火中の栗を拾うのはあの女性かも>

アメリカの対北朝鮮交渉の責任者を務めるジョセフ・ユン北朝鮮政策特別代表が、退任を表明した。朝鮮半島情勢が重要な時期を迎えるなか、国務省から貴重な専門知識と情報が失われることになる。

ジョセフ・ユンは3年間駐マレーシア大使を務めた後、2016年10月にバラク・オバマ大統領に北朝鮮政策特別代表に任命された。

「退任は個人的な決定だ」と、ユンはワシントン・ポスト紙に語った。

国務省のヘザー・ナウアート報道官は声明でユンが個人的な理由で退任を決めたことを確認。レスター・ティラーソン国務長官が「彼の決定を仕方なく受け入れ、幸運を祈った」ことを付け加えた。

韓国生まれのユンは、朝鮮半島に関するアメリカの外交を牽引する存在で、かつて北朝鮮を訪れ、アメリカ人大学生オットー・ワームビアの解放を交渉し、北朝鮮に拘束されている他の3人のアメリカ人とも面会した。

対話の重要性を強調

また、北朝鮮の脅威への対応を調整するため、韓国と日本を頻繁に訪れている。2月には東京を訪問し、アメリカが望む北朝鮮との対話について協議した。

ドナルド・トランプ大統領の「最大限の圧力と対話」政策について、ユンは軍事的選択肢の必要性に言及したが、それが実行される可能性については控えめだった。

「北朝鮮の核問題の平和的解決には、われわれの方針が非常に重要だ。これまで何度も言ったように、われわれは対話を望んでいる」と、ユンは記者団に語った。「すべての選択肢は机上にある。そのなかには、軍事的選択も入れざるをえない」。ただし、「私は(軍事行動の)時期が近いとは思わない」と彼は付け加えた。

北朝鮮と韓国の南北交流が再開し、北朝鮮が米朝対話に意欲を見せ、アメリカも対話を選択肢に加えるなど、北朝鮮問題を打開する突破口が開いた今、ユンは今後の米朝交渉において重要な役割を果たすと見られていた。特に、駐韓米大使が空席で、大使の職務をソウルの大使館のマーク・クナッパ代理公使が務めている現在、ユンの存在は大きかった。

大使の有力候補としては、ブッシュ政権下でNSCアジア部長を務めた北朝鮮専門家ビクター・チャの名があがっていたが、1月にワシントン・ポスト紙に北朝鮮に対する先制攻撃に強く反対する論説を寄稿した後、候補から外された。

国務省を離れるトップ外交官はユンだけではない。2月にはティラーソンが国務長官に指名される前に長官代理を務めたトッド・シャノン政治担当国務次官の辞任も発表された。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中