最新記事

脱北者

北朝鮮の秘密警察に米を送っていた脱北女性、韓国で逮捕

2018年2月20日(火)15時55分
ソフィア・ロット・ペルシオ

干ばつで水が干上がってしまった北朝鮮の水田地帯、平安北道(2015年) Jacky Chen-REUTERS

<北朝鮮にいる息子に会いたいとどんなに願っても、脱北者が北朝鮮に帰るのは韓国では違法行為になる>

韓国当局は18日、2011年に脱北してきた49歳の北朝鮮人女性を逮捕したと発表した。130トンの米を平壌に送った容疑だ。

韓国メディアは、脱北女性の身元を明らかにしていない。女性は、国家保安法に違反して北朝鮮に戻ろうとした容疑で起訴された。韓国の法律では、脱北者が北朝鮮に帰ることは違法行為になる。

当局によると、女性は中国人ブローカーの手を借りて、米65トンを2度にわたって北朝鮮の国家保衛省(秘密警察)に送る手配をした。計1億500万ウォン相当(9万8700ドル)に相当する米だ。

逮捕のきっかけは、再度米を送るために8000万ウォン(7万5200ドル)をブローカーに送金したこと。送金直後に、ソウルの南約35kmに位置する韓国北西部の都市スウォンで逮捕された。

脱北の罪を許してもらうための米

女性は、故郷に帰って息子に会いたいと思うようになったので北朝鮮当局と接触したと語っている。米を送ったのは、帰国後に罰を受けずにすむようにするための忠誠のあかしだったという。女性は韓国で自営業を営んでいたが、家や家財を売って北朝鮮に帰国する準備をしていた、と地元メディアは報じている。

当局の話によると、脱北者が自ら進んで北朝鮮政府に物資を送ることは滅多にない。

1948年に朝鮮半島が南北に分断されて以降、北朝鮮から韓国に逃げてきた人は約3万人に達している。そのなかには、家族に会いたい、韓国での生活に幻滅した、などの理由で北朝鮮への帰国を望む脱北者も少数いるが、国境を越えて北朝鮮に戻ることは禁じられている。

公然と北朝鮮に帰りたいと訴える脱北者もいる。人権団体の支援も受けるキム・リョンヒ(47)は、故郷の平壌へ帰りたいとの思いをことあるごとに訴えている。2017年12月には国連の記者会見に乱入し、韓国は人権侵害をしていると非難したことも。最近も、平昌冬季オリンピックを機に韓国を訪れていた(サムジヨン)管弦楽団の前にも表れ、「故郷に帰りたい」と訴えて韓国政府職員に遮られた。

【参考記事】北朝鮮に帰る美女楽団を待ち伏せしていた「二重脱北者」

(翻訳:ガリレオ)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米P&G、通期コア利益見通し上方修正 堅調な需要や

ワールド

男が焼身自殺か、NY裁判所前 トランプ氏は標的でな

ビジネス

ECB、6月以降の数回利下げ予想は妥当=エストニア

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中