最新記事

ライフライン

アメリカの橋は本当に危険? インフラ「劣化説」を検証した

2018年2月6日(火)12時28分

今回のロイターによる分析は、米国の道路インフラは依然として世界最高レベルだという、複数の独立した評価と一致している。

橋梁を含む道路ネットワークでは、米国は主要先進国のなかで世界第3位にランクされており、日本とフランスには後れを取るものの、ドイツ、英国、カナダ、イタリアを上回っている。これは、世界経済フォーラム(ダボス会議)がまとめた、企業幹部による最新の「世界競争力報告」からのランキングだ。

インフラ全般の質に関するランキングでも、米国は日本とフランスに微差で続いている。

専門家は、今後10年間で官民のインフラ投資を1─2兆ドル増やせば、拡大する経済のニーズを満たす、あるいはそれに近づくことになるという点に同意している。

だが、このままトランプ大統領などの政治家によってこの議論が歪められてしまえば、老朽化した水道管からの鉛被害や学校施設の整備など、切迫したインフラ投資ニーズ、あるいは地域経済効果の高いプロジェクトに投じるべき資金が奪われてしまうリスクが生じる。

「橋梁を改修するのも結構だが、その間に、メンテナンスを受けていない水道管が破裂して通勤経路が途絶してしまう」と語るのは、インフラ設計会社リフォーカス・パートナーズの創業者シャリーニ・バジハラ氏だ。

米国土木学会では、国内の大量輸送システムは他のインフラに比べ、質と予算措置の点で劣悪な状態にあると考えている。このロビー団体は2017年の報告書のなかで、米国のダムや堤防、上水道施設は橋梁よりもさらに悪い条件下に置かれていると評価している。

きっかけは崩壊事故

インフラ懸念が米国社会を揺るがせたのは、2007年、ミネアポリス市内のミシシッピ川を渡る州間高速35号線の橋梁がラッシュアワーに崩壊したことがきっかけだ。13人が犠牲となったこの事故を受けて、橋梁への投資拡大を求める声が高まり、その後の米国インフラに関する議論の基調となった。

だが連邦捜査官によれば、この崩壊の原因は老朽化ではなく設計上の欠陥だったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

6月完全失業率は2.5%で横ばい、有効求人倍率1.

ワールド

キーウ空爆で16人死亡、155人負傷 子どもの負傷

ワールド

26年の米主催G20サミット、開催地は未定=大統領

ワールド

ウィッカー米上院議員、8月に台湾訪問へ 中国は中止
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中